岩手の手作り漬物がピンチ 衛生基準の厳格化、相次ぐ生産断念

長年作り続けてきた漬物の出荷を断念した滝谷良志子さん。「店頭からなくなればこの味が忘れられてしまう」と寂しさを口にする=九戸村江刺家

 岩手県で長年親しまれてきた農家手作りの漬物がピンチを迎えている。食品衛生法改正で保健所の営業許可が必要になり、6月から厳しい衛生基準をクリアしなければ製造販売できなくなる。許可を得るための設備改修が必要となり、高齢化も相まって生産を断念するケースは少なくない。一方、リピーターも多い「古里の味」を守ろうと再出発を決意する生産者もおり、行政は改修費補助や相談支援などで後押しする。

 「お金をかけてまで続けられない」。九戸村江刺家の農業滝谷良志子さん(68)は断念する道を選んだ。支え合ってきた夫が病気を患い、後継ぎもいない。「共同で使える施設があれば」とも思ったが、新鮮な山菜やキノコの出荷に注力することにした。

 契機となったのは2018年の同法改正。完全適用までに設けられた猶予期間は、31日で終わる。

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