幹細胞で2型糖尿病を治癒、中国の研究者が発表

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生活習慣病と言えば、誰もが真っ先に思い出すのが糖尿病だろう。脂肪食などの過食や運動不足によって身体のインスリン分泌能力が低下して発症するこの病気は現在、完治を可能とする治療法がみつかっていない。

しかしながら、早期発見と適切な治療を選択・実行しさえすれば、付き合いながらも健康に近い生活を維持することが可能だ。これには、血糖値を管理するためのインスリン投与といった手段も含まれる。

医学界ではこの病気を治療する方法を見つけるための研究が長年続けられており、その最新の成果報告が上海の研究グループからもたらされた

この研究グループは、59歳の2型糖尿病患者の血液から採取した幹細胞を用い、弱った膵臓がふたたびインスリンを産生できるようにしたという。この患者は、すでに25年間糖尿病を患っており、2017年には腎臓移植を受けている。しかし数年後には血糖値のコントロールがききにくくなり、幹細胞治療を試すに至った。

研究者らは患者の幹細胞を用い、インスリンの生産を司る膵島と呼ばれる組織に変化させた。この膵島を患者の膵臓に移植したところ、新しい膵臓組織が形成され、インスリンの分泌が再開したという。

手術から11週後、移植された幹細胞が意図したとおりに機能しているのをみて、医師は患者へのインスリン投与をやめた。さらに糖尿病治療のための各種経口薬も徐々に減らし、最終的に使用を中止したが、33か月を経た後も膵臓は機能を保ったままだと報告され、実質的にこの患者の2型糖尿病は治癒したと言える状況になった。

この治療方法が、あらゆる人に対して有効ならば、2045年までに成人の8人に1人、およそ7億8300万人が罹患すると予想されている糖尿病患者の数を大きく減ら競るようになることが期待される。

現在、アップルやサムスンをはじめとするテクノロジー企業の一部は、スマートウォッチなどのウェアラブルデバイスを用いた、非侵襲的かつ持続的な血糖値監視技術を開発しようとしている。

だれもが血糖値を管理し、症状が現れる前に糖尿病の兆候を知ることができれば、また糖尿病と診断されても、今回の研究のような治療方法が確立されれば、糖尿病はもはや治らない病気ではなくなる可能性も考えられる。

ちなみに、2型糖尿病は後天的に発現するものであり、必ずしもインスリン投与を必要とするものではない。一方、先天的な1型糖尿病患者にはインスリン投与が必須となる。いずれの場合も病状が進行すれば、様々な合併症リスクが高まり、特に心臓や腎臓に影響が及ぶ可能性が高まる。

今回の研究についても、実用化はまだ何年も先になると考えられる。また、2023年6月には、やはり幹細胞を用いて膵島細胞を形成し移植する治療方法が米食品医薬品局(FDA)によって承認されているが、こちらは1型糖尿病患者を対象とするものだった。

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