「シークレット・ガーデン」を一気見。魂の入れ替わりをキュートに振り切って演じたヒョンビンの演技が秀逸 6〜15話レビュー【韓国ドラマ】

「シークレット・ガーデン」は、2010年11月から2011年にかけて、韓国SBSで放送されたテレビドラマ。「これこそラブコメの王道!」と絶賛する方も多いのではないでしょうか。ドラマの放映後、ヒョンビンが兵役に行ったことでも話題になりました。全20話を久しぶりに一気見した感動を3回に分けてお届けします。この記事は6〜15話のレビューです。
※ネタバレにご注意ください

↓↓1〜5話はこちら

誰かのことがどうしようもなく好きになる。すると、周りのことが見えなくなって一直線に突き進む。それが恋というものだ。そんな恋が愛へと昇華し、ともに人生を歩もうと考えたとき、否応なく周りを意識することになる。ごく普通の恋愛だって、相手の立場で人生を見つめ、理解しようとする時間は必要だ。

だが、生まれ育った境遇があまりにも違い過ぎるキム・ジュウォン(ヒョンビン)とキル・ライム(ハ・ジウォン)の身に起きたのは、お互いの魂が入れ替わるという唐突でファンタスティックな荒業だった。中盤6~15話は、男女が入れ替わるという不都合を味わいながら、距離を縮めていく2人がラブコメ要素たっぷりに描かれる。

済州島の神秘ガーデンで謎の女主人から土産にもらった薬酒を飲んだジュウォンとライム。翌朝目覚めると、お互いの魂が入れ替わっていた。

だが、そのことがきっかけで、ライムは財閥の御曹司として母の寵愛を一身に受け、一族の期待を背負って生きてきたジュウォンのバックグラウンドやデパートCEOとしての立場を知ることになる。

ジュウォンは消防士の父を殉職で亡くして天涯孤独、貧しいながらもスタントウーマンとしてのプライドを胸に生き抜いてきたライムの凄絶な生きざまに触れる。

ジュウォンの母ブノン(パク・ジュングム)が2人の仲を引き裂こうと、ライム(魂はジュウォン)に「貧乏人が!」と暴言を吐いたとき、ジュウォンは「ライムの体になった自分が(その言葉を)受けることになって幸いだ。魂が入れ替わったのを初めて喜べた」とつぶやく。

ジュウォン(魂はライム)は、元恋人のユン・スル(キム・サラン)への届かぬ思いに苦悩する従兄弟のオスカー(ユン・サンヒョン)を近くで見守りながら、「体が入れ替わってよかったと初めて思えた。辛いときにその歌声で慰めてくれたオスカーの力になれるから」とほほ笑む。

おちょぼ口のキラキラ上目づかいで内股小走り。驚くときにはほっぺを両手ではさみ、うれしいときにはつま先トントン——。ライムの仕草そっくりなジュウォンをキュートに振り切って演じたヒョンビンの演技が秀逸。イケメン代表・ヒョンビンのこんな姿は、きっと二度と見ることができないお宝だ。

ジュウォンの体になったライムを腕組み俺様ドスドス歩きで演じたハ・ジウォンも、「あれ? 私は今、どちらを演じなければいけないんだろう?とわからなくなってしまったことがある。共演者の皆さんも、最後は監督も」とインタビュー(※)で語る憑依ぶりだ。

雷鳴が轟き、大雨が降って“チェンジ”の魔法が解けたとき、近くにいたらまた入れ替わるのではと家に逃げ帰ったライムを追いかけたジュウォンは「抱き締めに来た。よかったな、キム・ライムに戻れて」と初めて素直に思いを伝える。

こうしてお互いの生まれ育った環境や立場のギャップを理解し、それでも前に進もうととする2人の前に何度も立ちはだかるのが、ジュウォンの母。「そこまで言う?」の罵詈雑言の限りを尽くし、ライムの心を挫けさせようとする。息子ジュウォンには財産、地位、権力、贅沢な暮らしをすべて捨てるなら好きにすればいい、と最後通牒を突きつける。

だが、反対されればされるほど燃え上がるのが恋というもの。初めはライムに向かって「人魚姫になって、いずれは泡となって消えてくれ」と上から目線の提案をしていたジュウォンだが、「私は人魚姫になれない。なぜなら人魚姫は王子様を愛していたから」と心を閉ざそうとするライムに、「僕が人魚姫になって。泡のように消える」と譲歩する。

2人が紡ぐ愛のツールになる童話「人魚姫」は、人魚姫が王子様を愛するがゆえ、その幸せを願って水の泡になって消える、という哀しい純愛物語。いずれどちらかが“自己犠牲”を払うことになるのでは?とラストを予感させる伏線の張り方が見事だ。しかもこのドラマ、1回目よりも2回、3回と見ることで、登場人物の心情やセリフの意味をより深く理解する醍醐味が味わえる。そして、また最初から見たくなる。

14話。尊敬する父を侮辱する言葉をジュウォンの母に投げつけられ、二度と会わないと心に決めたにもかかわらず、想いが断ち切れないライムの足はジュウォンの豪邸へと向かっていた。そこで行われていたのは、VIPパーティー。立ちすくむライムに「魔法をかけてあげる」と救いのエスコートしたのは、オスカーだった。鬼母に妨害される2人の純愛をそっと応援するオスカーの“オッパ(お兄ちゃん)”ぶりに心癒される。いい奴だ。

「体は離れても心は離れない。だから会いに来た。だけど人魚姫はイヤ。私は人魚姫にしかなれない?」とストレートに告白するライム。ライムのことを「こんなカッコいい女は他にいない」と知人に紹介するジュウォン。2人は大勢の招待客の前で、何度も熱いキスを交わす。

だが、幸せも束の間の雨の夜、2人の魂は再び入れ替わる。そんなタイミングで舞い込んできた、ライムのハリウッド映画最終オーディション進出の知らせ。ライム(魂はジュウォン)のオーディションが心配で付き添うジュウォン(魂はライム)は、急用でデパートに戻り、乗ったエレベーターに閉じ込められた瞬間、降り出した雨で魂が元に戻ってしまい、閉所恐怖症の発作で気を失う……。

いよいよ残り5話。伏線回収に向けて、狂言回しの役割を果たすのが、消防士として人の命を助けて亡くなった、というライムの父。「君にはすまないことをした。こうでもして娘を助けたい身勝手な父親をどうか許してくれ」とつぶやき、神秘ガーデンの薬酒に浮かぶその顔(6話)をお見逃しなく。

(※)参考:『韓国ドラマ「シークレット・ガーデン」オフィシャル・ガイド後編』(2012年6月12日発行/講談社)


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