地方と都会で格差 小中学校体育館の冷房設置率 東京82.1%に対し、島根1.4%、鳥取は2.0% 「財政状況の違いで教育環境に差があるのはよくない」

体育館に設置されたスポットエアコン(資料)

 公立小中学校体育館の冷房設置を巡り、地方と都会で格差が生じている。設置率の全国平均(2022年9月時点)は11.9%で、島根県1.4%、鳥取県2.0%など33道府県は5%以下となる一方、東京都は82.1%と突出する。熱中症対策に加え、災害時に避難所として役割を果たすだけに格差是正を求める声は強い。 

 島根県内の全19市町村教育委員会によると、5月時点で公立小中学校の体育館は284棟あり、冷房を備えるのは川本町2棟、津和野町、西ノ島町それぞれ1棟の計4棟のみ。川本、西ノ島両町は新型コロナウイルス関連の国の交付金を活用し、津和野町は体育館改修に伴って導入した。

 国は災害時の避難所としての役割も想定し、工事費を補助するが、財政負担が重くのしかかる。浜田市教委の試算で、安価なスポットクーラーでも1台300万~400万円かかり、1体育館に5~6台は必要で費用は数千万円になる。国は断熱化の工事も求めており、同教委教育総務課の藤井陽子課長は「補助があっても事業費は膨大になる」と吐露。江津市教委学校教育課の河野宏光課長補佐も電気代の値上がりなどに触れ、「維持管理費を含めて負担が大きい」と話す。

 一方、東京都は猛暑対策や教育環境の整備を進めるため、18年度に都独自で市区町村の工事費への補助を開始。24年度は公立小中学校の体育館だけで約4億円を確保した。文部科学省の担当者は「全都道府県の中で独自財源を確保しているのは東京くらいしか聞いた事がない」とする。

 東京都墨田区は、21年度までに小中学校全35校で設置が完了。総事業費約19億5千万円のうち半額は国と都の補助を活用し、同区教委事務局庶務課の塩沢満課長は「都の補助があり、設置が進んだ」と話す。

 24年度の一般会計当初予算は、島根県4617億円で自主財源32%に対し、東京都は8兆4530億円で都道府県で唯一国から地方交付税を受けておらず、自主財源は76%を占める。島根県教委教育施設課の和田久史課長は「財政状況の違いで教育環境に差があるのはよくない」と述べ、国が格差を埋めるよう引き続き要望する考えを示した。

 気象庁によると、昨年8月の最高気温の平均は松江で平年より2.6度高い34.2度を記録。今夏も地球温暖化などの影響で全国的に気温が高くなり、猛暑日が増えると予想している。松江市立宍道中学校の木山晴夫教頭は、授業や部活動を念頭に「冷房がないとつらいとの声が現場から上がっている。子どもの安全を考えると設置を進めてほしい」と求めた。      ◇  公立小中学校の冷房施設への補助制度 文部科学省は、体育館が災害発生時に避難所としての役割も担うことから、冷房設備を導入するよう推奨。2025年度までに新設する場合、工事費用の2分の1を下限400万~上限7千万円で補助する。防災機能強化などの観点から断熱性が要件となっている。

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