「不可欠な2人のパートナーを失った」久保建英の今季を番記者が総括。指揮官はアジア杯後の“失速”を嘆くも「無理な注文」と擁護【現地発】

レアル・ソシエダの2023-24シーズンは、アトレティコ・マドリーとの悲しい敗戦(0-2)で幕を閉じた。

今シーズンの私のチームに対する評価は「A」あるいは「A+」だ。昨シーズン終了時にチームトップスコアラーがライバルのビジャレアルに移籍し、あらゆるタイプの選手を輝かせることができる魔術師が膝の故障で引退を余儀なくされたと聞かされていたとしよう。誰もが頭を抱えていたはずだ。

しかもそのアレクサンダー・セルロトとダビド・シルバは、チーム1の個の打開力を誇るタケ・クボ(久保建英)にとって、欠かせないパートナーだった。

おまけにチャンピオンズリーグ(CL)出場を見据えて、アマリ・トラオレ、アルバロ・オドリオソラ、キーラン・ティアニー、アルセン・ザハリャン、アンドレ・シウバを獲得したが、そのうちシーズンを通してレギュラーとして貢献したのは、トラオレだけ。残りの4人は大なり小なりコンディション不良に悩まれた。

その上、アンドレ・シウバの不調は、ウマル・サディクとカルロス・フェルナンデスを含めたCF3人の合計得点数が10にとどまるという深刻な事態を招いた。ちなみにセルロトは26ゴールを叩き出している。

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そんな中でも、5年連続で欧州カップ戦の出場権を獲得したのだ。「A」あるいは「A+」には時間の経過とともにミラクルというアスタリスクをつけなければならないかもしれない。これだけ在任期間が長くなれば、何かとケチをつけてくる連中が出てくるのは避けられないが、イマノル・アルグアシル監督の功績を改めて強調すべきだろう。

ある時、オフレコでその彼に2024年に入ってからチームが下降線を描いた理由を聞いたことがある。「アジアカップとアフリカネーションズカップから帰還した後のタケとトラオレの失速」というのが答えだったが、とりわけタケに関しては、その診断が妥当かどうかは疑問符が付く。

確かに序盤に比べると、パフォーマンスは落ちた。しかしそもそもがシーズン通して絶好調の状態を維持するのは無理な注文だ。ヒントは私の質問にあるように思う。そう、チームのパフォーマンスはアジアカップ開催中にすでに低下し、そしてタケもまた帰還後、コンディション不良も響き、起爆剤となることはできなかった。

それが前述の前線の得点力不足が暗い影を落とす結果となったわけだが、その大きなハンデを抱える中でも欧州行きを決めたのは、チーム一丸となってリードを守り切る集中力と粘り強さを見せたからに他ならない。タケももちろんその1人で、相手にボールが渡ると、プレスに奔走し、守備に身体を張り続けた。

どんな試合でも、ファイティングスピリットを見せるのがタケの真骨頂だ。それは消化試合的な位置づけだったアトレティコ戦も同様だった。

コンディション不良という理由以外には欠場したことの説明がつかない前節のベティス戦を経てスタメンに復帰すると、常に相手守備陣を脅かす存在となっていた。しかしこの日もまた孤軍奮闘ぶりが目立ち、90分間、ゴールは遠かった。

とにかくタケにはゆっくり静養してほしい。その意味では、パリ五輪不参加は、プラスになるはずだ。ソシエダはタケの力を必要としており、来シーズンもチュリウルディンのユニホームを着て躍動した姿を見せてくれると信じている。なぜならそれが誰にとっても最善の選択であるはずだからだ。タケにとっても。

取材・文●ミケル・レカルデ(ノティシアス・デ・ギプスコア)
翻訳●下村正幸

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