マニアック!スイスの変わり種ミュージアム

スイスには世界クラスの規模を誇る優れた美術館や博物館がある一方、実に奇妙でニッチな博物館も存在する。中でも、とりわけ変わった博物館を紹介しよう。

スイスは、世界で最も博物館の集中密度が高い。国内には1000館以上の博物館が、様々なテーマを扱っている。主要観光スポットとは一味違う、ディープなスイスを味わえる博物館を厳選して紹介する。

カエル博物館

鑑賞できるものは特にない。フリブール州にあるエスタヴェイエ・ル・ラック博物館に併設されたカエル博物館で鑑賞できるのは、せいぜいリスに乗ったカエルと、カエルの小学校くらいだ。ここには19世紀生まれのカエルのはく製100体以上を使い「日常生活によくあるシーン」を表現した作品が展示されている。フリブール州のサイトは、「家具の忠実な再現や情景の装飾へのこだわりが、コレクションを非常に特別なものにしている」と紹介する。

ミシン博物館

もしあなたがミシン好きなら、この場所はたまらないだろう。フリブールにあるスイスミシン博物館には、12世紀に建てられたアーチ型の地下室に250台を超えるミシンが展示されている。同コレクションはヴァスマー博物館の一部として管理されている。ヴァスマー博物館は、さまざまな時代の掃除機やアイロンなど、19世紀以降の洗濯技術に関するユニークな家庭用電化製品をコレクションしている。

テディベア博物館

もしあなたがテディベア恐怖症なら(世の中にはそういったものがあるらしい)、バーゼル・シュピールツォイク・ヴェルテン博物館(バーゼル世界のおもちゃ博物館)には近づかない方がいいかもしれない。この博物館には世界最大となる2500体のテディベア・コレクションがある。テディベアの名前の由来や、1904年に製作されたシュタイフ社の「PGB 35」モデルがなぜ「テディベア史における金字塔」であるのかも知ることができる。そのほか博物館には、数え切れないほどの歴史深い人形、メリーゴーランド、ままごとセットなどがある。あらゆる年齢の子どもたちが、きっと気に入るだろう。

H.R.ギーガー博物館

反対に、フリブール州グリュイエールにあるH.R.ギーガー博物館は、あまり子どもたちは気に入らないかもしれない。16歳以下の入館は大人の同伴が必要だ。

ハンス・ルドルフ・ギーガーは、映画「エイリアン」に登場する地球外生命体エイリアンのデザインとセットを手掛けたことで世界的に知られるスイス人アーティスト・彫刻家で、2014年に死去した。ギーガー自身が設計・監修した同博物館は、人間と機械が融合したような「バイオメカニカル」な作品で埋め尽くされている。決して万人受けするテイストではないが、喉が渇いたらぜひ併設された「ギーガーバー」に行ってみて欲しい。エイリアンをモチーフにした大聖堂スタイルのカフェで、映画のセットの中にいるような異次元空間を楽しめる。

ビール瓶博物館

ビールや瓶に興味があるなら、ザンクト・ガレンにあるビール瓶博物館は見逃せない。ここには、スイスのビールメーカー260社から集められた3000本のビール瓶が展示されており、特に東スイスは昔も今もビール醸造の中心地であることを物語っている。フリブールのカーディナル醸造所跡にあるスイスビール博物館と混同しないよう、注意が必要だ。

魔術系の博物館

「スイスほど魔女を拷問した国はない」とswissinfo.chで数年前に書いた。「欧州最後の魔女」として知られるスイスのアンナ・ゲルディは1782年、グラールス州議会に死刑を言い渡され、処刑された。2008年になってそれは冤罪だったと正式に認められ、グラールスにゲルディの名を冠した博物館が作られた。アールガウ州グレニヒェンの「スイス魔女博物館」では、スイスと欧州における魔女裁判の概要に加え、民間信仰、治療法、魔女の動物、魔法の薬草、超自然的な力、幽霊などについて展示されている。入場は11歳から。

これだけでは物足りないという方は、バーゼル州シッサッハにある絞首刑執行人博物館もおすすめだ。かつての牢獄に、ギロチンの刃や斬首用の剣など、処刑や拷問の道具が所狭しと並んでいる。

ジャケ・ドローのオートマタ

ヌーシャテルにある美術・歴史博物館には、250年の歴史を持つジャケ・ドローのオートマタ(オルゴールを内蔵したからくり人形)が3台展示されている。時計職人のピエール・ジャケ・ドローが製作したオートマタ「音楽家」は本当にオルガンを演奏できるし、「画家」は本当に絵を描くことができる。中でもすごいのは「文筆家」だ。お洒落な青年の姿をしたこの70センチのからくり人形は、40文字までであればどんな文章でも書けるプログラム機能がついているうえ、羽ペンにインクをつけて書く(インクがこぼれないように手首を振ることもできる!)。しかも、書きながら目で文字を追う。

ワックス・ムラージュ博物館

チューリヒ大学にあるワックス・ムラージュ博物館の展示に費やされた技術のレベルは桁外れだ。ムラージュとは、医師(多くは皮膚科医)の訓練に使われる病変や外傷を模した模型のことで、驚くほど本物そっくりにできている。今日ではゴムやラテックスで作られるのが普通だが、この博物館にあるものはすべてワックス製。ハンセン病の鼻、目の潰瘍、耳の膿瘍など、すべてがリアルだ。例えば、1921年にチューリヒで天然痘にかかったフリーダ・W.の顔はこちら(非常にリアルなため閲覧注意)。

ローカル情報サイトRON ORPには「教育と研究のためのワックス模型は、見る者に独特の感動を与える。ムラージュ博物館には千の悪夢を見るのに十分な素材がある」と書いている。「入場料は無料だが、本来なら博物館側が入場者にお金を払ってほしいくらいだ」

英語からの翻訳:大野瑠衣子、校正:ムートゥ朋子

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