「EUROで優勝できなかったことが信じられない選手」を専門メディアが選定!まだ現役バリバリのエムバペが挙げられた理由とは!?

長く厳しいシーズンを終えたばかりの欧州各国リーグだが、サッカーの興味はクラブレベルから代表チームの戦いへ移る。6月14日から7月14日までドイツの10都市で開催されるビッグイベント、EURO2024だ。

今回で17回目を迎える欧州王者を決するコンペティションは、歴史に残る名場面や輝かしいスター選手を生み出してきた。1976年に西ドイツ(当時)との決勝でのPK戦でGKの意表を突くチップキックで栄光のゴールを決めたチェコスロバキア(当時)のアントニン・パネンカは、後にその名がこの技に冠せられることとなった。

フランスの将軍、ミシェル・プラティニは自国開催の1984年に左右両足、頭、FK、PKとあらゆる形でのゴールを決め、5試合でハットトリック2回を含む計9ゴール、しかもその全てで決勝点ゲットという大会史に残る活躍を披露し、名実ともに世界のトッププレーヤーとなった。1988年には、ルート・フリット、マルコ・ファン・バステンらオランダの名手たちが躍動し、同国代表にとって唯一のビッグタイトルを勝ち取り、新たなスーパースターとしての地位を手に入れている。

2008年はスペインが産みの苦しみを乗り越えてついて栄光を手に入れ、大会を席巻した優れたタレントたちが2年後の世界制覇、さらには4年後の欧州連覇の足掛かりを掴んだ。そして2016年には、クリスチアーノ・ロナウドが自身は決勝の途中で涙の交代を強いられるも、念願の代表初ビッグタイトルをポルトガルにもたらし、その価値をさらに上げた。

これらはEUROのスターの系譜のほんの一部であり、欧州大陸のビッグイベントの歴史はまさに彼らに彩られてきたとも言える。しかし、一方でクラブレベル、あるいはワールドカップで大きな功績を残したスーパースターでありながら、EUROではついに栄光に届かなかった選手も多く存在する。

英国のサッカー専門サイト『Planet Football』は、そういった「EUROを勝ち取れなかったことが信じられない選手」13人を選定。そのうち12人はすでに現役を退いたレジェンドたちであり、いずれも様々な理由でアンリ・ドロネー・トロフィーを取り逃がし、その輝かしい実績にさらなる彩りを加えることはできなかった。その顔ぶれは以下の通り。
フィリップ・ラーム(ドイツ代表/準優勝)
バスティアン・シュバインシュタイガー(ドイツ代表/準優勝)
ヨハン・クライフ(オランダ代表/ベスト4)
ロベルト・バッジョ(イタリア代表/出場なし)
アルフレッド・ディ・ステファノ(スペイン代表/予選ラウンド1回戦)
エウゼビオ(ポルトガル代表/出場なし)
ミカエル・ラウドルップ(デンマーク代表/ベスト4)
ラウール(スペイン代表/ベスト8)
パオロ・マルディーニ(イタリア代表/準優勝)
パベル・ネドベド(チェコ代表/準優勝)
アンドレア・ピルロ(イタリア代表/準優勝)
デニス・ベルカンプ(オランダ代表/ベスト4)
最初のドイツ人2選手は2014年ブラジルW杯優勝メンバーの主力として歴史に名を残すも、EUROでは2008年に最大のチャンスを迎えたが、前述のスペインに栄光を阻まれ、1974年西ドイツW杯で世界を驚かせたクライフは、2年後のEUROでも因縁の相手である西ドイツと決勝で相まみえるはずが、準決勝でチェコスロバキアに足元をすくわれた。

イタリア・サッカー史に残る屈指のテクニシャンであるバッジョは、1988年11月のデビュー以降、EUROとは縁がなく、1992年は予選敗退、1996、2000年は招集されず。サッカー史上最も優れた選手とも評されるディ・ステファノは、アルゼンチン、コロンビアを経て、スペインでも代表選手として31試合に出場したが、EUROでのプレーは計3ゴールを挙げた第1回大会の予選ラウンド・1回戦のポーランド戦(4-2・3-0)のみ。2回戦の相手が当時の敵国だったソ連だったことで棄権となったためである。

1966年イングランドW杯で得点王に輝いたエウゼビオもEURO本大会の舞台に上がることはできず、ポルトガルが初めて予選突破を果たしたのは1984年大会だった。ラウドルップはEURO1992当時、リカルド・メラー・ニールセン代表監督との確執で代表を離れており、弟ブライアンだけが栄光のメンバーの一員に。「ダニッシュ・ダイナマイト」が猛威を振るった初出場の1984年大会が最高成績となった。

スペインの名手ラウールは2000年大会のベスト8止まり。2008年はルイス・アラゴネス監督の構想から外れ、歴史に名を残すチャンスを逸している。あと一歩のところまで迫りながら、ことごとく代表タイトルに手が届かなかったイタリアのレジェンド、マルディーニ。EUROでは2000年大会、決勝でフランス相手に終了間際までリードを保ったものの、土壇場での失点、そして延長戦での悪夢のゴールデンゴールで夢は潰えた。
1996年大会でイタリアに冷や水を浴びせるゴールを決めて脚光を浴びたネドベドは、同大会で決勝まで到達。クラブレベルではラツィオ、ユベントスで順調な歩みを見せてバロンドールも受賞したが、2回目以降のEUROでは2004年大会準決勝で伏兵ギリシャに敗れて挑戦は終わった。ピルロもクラブでの輝かしいタイトル歴に加え、イタリア代表としても2006年ドイツ大会優勝と申し分のない実績を有するが、EUROでは2012年に決勝まで駒を進めたが、スペインの猛威の前には成す術がなかった(0-4の大敗)。
オランダの天才デニス・ベルカンプは初のビッグイベントとなったEURO1992に前回王者の一員として臨み、スター揃いのチームメイトとともに躍動したものの、準決勝でデンマークの勢いに行く手を阻まれた。そして自国開催で優勝候補にも目された2000年大会では準決勝まで順調に勝ち進み、イタリア相手に数的有利も得て猛攻を仕掛けるもチャンスをことごとく逃し、この時もPK戦で敗れてキャリアに欧州制覇という勲章を加えることはできずに終わっている。

そして、こうした過去の選手たちにまじって、唯一現役選手としてこのリストに名前が挙げられたのは、フランスのキリアン・エムバペだ。これについて、同メディアは「このリストに彼を含めるのは厳しいかもしれない。彼はこれまで、一度しかEUROに出場しておらず、今夏に開催される大会では優勝候補と目されるフランス代表の一員である」と綴りながらも、以下のように続けた。

「しかし、10代でW杯を制したことにより、彼が普通の基準で評価されることは決してない。25歳の彼は、この大会ではまだ一度もゴールを挙げたことがなく、前回2020大会(開催は2021年)のラウンド・オブ16でスイスに敗れた際には、決定的なPKを外している。頑張れ、キリアン……」

ちなみに同メディアは、コパ・アメリカでも同様の企画で7人の偉大な選手を選定している。歴史上最も優れたサッカー選手の座を今なお争っている2人の故人がここに名を連ね、また現在は怪我からのリハビリに励み、今夏の大会でも出場メンバーから外れた名手も含まれている。その顔ぶれは以下の通り。

ネイマール(ブラジル代表)
ディエゴ・マラドーナ(アルゼンチン代表)
ペレ(ブラジル代表)
ハビエル・マスチェラーノ(アルゼンチン代表)
カルロス・テベス(アルゼンチン代表)
ハメス・ロドリゲス(コロンビア代表)
カカ(ブラジル代表)

構成●THE DIGEST編集部

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