「父と比べられて辛かった」ロマーリオ、ペレ、ジーコ…偉大なフットボーラーの息子たちが抱いた苦悩と歩んだキャリア【現地発】

かつてヴァスコダガマやバルセロナなどでゴールを量産し、ブラジル代表の一員として1994年ワールドカップで優勝を果たして大会MVPにも選ばれたロマーリオ(58歳)が今年1月、リオ州2部のアメリカの会長に就任。3月に30歳の長男ロマリーニョを獲得すると、「息子と一緒にプレーするのが夢だった」と打ち明け、4月には自らの現役復帰を発表した。

ちなみに、本稿を執筆している5月末時点でまだ出場機会はなく、「息子と一緒にプレー」する夢は実現していない。

ロマリーニョは、父親がバルセロナ在籍中の1993年、バルセロナで生まれた。13歳のときに父親も在籍したヴァスコのアカデミーに加わり、2013年、19歳でプロ選手となった。しかし、以後は中小クラブを転々し、通算67試合に出場して1得点。偉大な父親とは比べるべくもない。

ブラジルでは偉大な選手の息子がプロ選手になったケースがいくつかあるが、そのほとんどは大成せずに終わっている。

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ペレの息子エジーニョが、その典型だ。父親がニューヨーク・コスモス在籍中にニューヨークで育ったエジーニョは、不世出のストライカーだった父親とは真逆のポジションであるGKとして、プロを目指した。

GKとしては小柄だったが、動きが俊敏で、父親と同様、サントスでもプレーした。しかし、大成することなく29歳で現役を引退。2014年、麻薬取引に関与して逮捕された。2019年に釈放されて指導者の道を目指したが、際立ったキャリアは歩めておらず、昨年2月にロンドリーナというスモールクラブの監督を退任して以降、フリーの状態が続いている。

ジーコの場合は、3人の息子のうち2人がプロ選手となった。卓越した技術で世界的な名声を得た父親と同様に2人とも攻撃的MFで、長男ジュニオールは中小クラブを渡り歩いた後に25歳で引退。三男チアゴも、やはり中小クラブでキャリアを重ね25歳で引退した。

いわゆる二世の多くが異口同音に「父と比べられて辛かった」と漏らす。裕福な家庭に生まれたことも、ハングリー精神の欠如という"弱点"となったのかもしれない。

文●沢田啓明

【著者プロフィール】
1986年にブラジル・サンパウロへ移り住み、以後、ブラジルと南米のフットボールを追い続けている。日本のフットボール専門誌、スポーツ紙、一般紙、ウェブサイトなどに寄稿しており、著書に『マラカナンの悲劇』、『情熱のブラジルサッカー』などがある。1955年、山口県出身。

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