【森保ジャパン】6月シリーズでチェックしたい4つのポイント。現状のフルメンバーを招集、収穫のある活動にしなければならない

2026年の北中米ワールドカップで優勝を目ざしている日本代表。だが、ご存じの通り、1~2月のアジアカップではイラクとイランに敗れ、8強にとどまった。

空中戦とリスタートの守備の脆さという課題に直面し、伊東純也(スタッド・ドゥ・ランス)と三笘薫(ブライトン)という看板サイドアタッカー不在の攻撃という部分でも乏しさを露呈した。少し時間が経過してしまったが、その事実を忘れてはならないだろう。

加えて言うと、3月のW杯アジア2次予選・北朝鮮2連戦のうち、平壌開催の第2戦が中止になり、活動期間が5日間に短縮された。しかも、18日と22日はコンディション調整をしただけで、まともな練習ができたのは2日程度。アジア杯の修正に本格的に着手できたとは言い難く、森保一監督も、このまま最終予選に突入するのはリスクが高いと考えたはずだ。

すでに最終予選進出が決まっているなかで、今回の6月シリーズではテスト的な要素を最小限にし、フルメンバーを招集したのも、ここでチームのベースを固めておく必要がある、という危機感を抱いたからに違いない。

シーズンを戦い抜き、疲労困憊の欧州組を中心としたチーム編成にした以上、収穫のある活動にしなければならないのは事実。ここで森保監督がやるべきことを改めて整理したい。

まずは先述の通り、アジア杯の課題と向き合うことが第一だ。蹴り込まれた時の対応が不安定というのは大会を通して見受けられた。今回の2試合のうち、特にシリアはイラクやイランの戦い方を踏襲してくる可能性が高い。

相手のロングボールの出どころを抑えに行くのか、後ろで跳ね返すのかという意思統一をチームとして明確にしなければ、最終予選では同じ轍を踏む恐れがないとは言えない。リスタートの守備を含めて、しっかりと整理しておくことが重要だろう。

2つ目は伊東・三笘不在時の戦い方のバリエーションを広げること。右サイドに関しては、アジア杯では堂安律(フライブルク)が毎熊晟矢(C大阪)、久保建英(レアル・ソシエダ)と絡みつつ、好連係を披露した。が、今回は毎熊が選外。菅原由勢(AZ)や橋岡大樹(ルートン)とのコンビネーションを高める必要がある。

鎌田大地(ラツィオ)や旗手怜央(セルティック)の復帰によって、久保が右サイドで使われる可能性もある。そのあたりも視野に入れ、サイドを個人で一気に打開するタイプの伊東とは違った崩し方を確認しておきたいところだ。

左サイドに目を向けると、三笘不在時の第一オプションは目下、前田大然(セルティック)が入る形。彼も前からのプレッシングのみならず、スピードを活かした仕掛けを出せるようになっている。

アジアの格下相手に質と回数を高めていければ、森保監督にとっては大きな安心材料になる。さらに旗手や相馬勇紀(カーザ・ピア)らも左サイド要員と位置づけられるため、彼らが入った時にどうするかも再確認しておく必要がある。

左サイドバックに伊藤洋輝(シュツットガルト)が入るのか、長友佑都(FC東京)が入るのかによって前のアタッカーやボランチの選手のプレーも変わってくる。そのすり合わせも確実に進めるべきだ。

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3つ目は怪我やチーム状態などで代表を長く離れていた選手たちの状態の確認。冨安健洋(アーセナル)や鎌田、久保、旗手、鈴木唯人(ブレンビー)らが該当する。

特に冨安はアジア杯の後、アーセナルに戻ってから完全復帰するまでに2か月以上かかった。最終予選の時期になれば、チームでリーグ戦とチャンピオンズリーグを掛け持ちし、さらにアジアに戻って短期間で移動しながら予選を戦うことになる。彼はそれだけの負荷をかけられる状態なのか。そのあたりを改めてチェックしておくことが肝心だ。

鎌田にしても、ラツィオ残留濃厚と言われながら、一転して退団する方向に傾き、来季は異なるリーグに参戦する見通しだ。となれば、またも新天地への適応を強いられる。それは移籍の可能性のある板倉滉(ボルシアMG)や町田浩樹(ユニオンSG)、田中碧(デュッセルドルフ)、鈴木らにも言えること。代表とクラブの掛け持ちをするための意識向上、チーム内の共通理解を持たせることも、今回の重要なテーマではないか。

そして4つ目は東南アジアの劣悪な環境での戦い方だ。6日のミャンマー戦が行なわれるヤンゴンは高温多湿の気候が続き、連日の雨予報。悪天候に見舞われるのは間違いない。

2019年9月のカタールW杯・アジア2次予選の初戦の時も、ぬかるんだピッチにかなり苦戦している。その試合でゴールを決めた南野拓実(モナコ)、年代別代表時代から何度かプレーしている久保らは多少の慣れがあるかもしれないが、多くの選手が戸惑いを覚えるだろう。

短期間での移動も含め、普段は整った環境でプレーしている欧州組の選手たちにとってストレスは大きい。メンタル的にも難しい戦いになるが、まずはミャンマーでスッキリと勝って、11日のシリア戦につなげるのが理想的だ。

招集されたメンバーは26人だが、今回の2連戦ではできるだけ多くの選手を起用して、戦力の幅を広げておくことも森保監督に注文したいところ。いずれにしても、数少ない代表活動を充実したものにしなければ、2年後のW杯の成功はない。そこは今一度、しっかりと自覚を持ってほしいものである。

取材・文●元川悦子(フリーライター)

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