火山観測は「国家百年の計」 初代火山調査委員長の清水洋さん 雲仙・普賢岳大火砕流から33年

雲仙・普賢岳の溶岩ドームの状況を確認する清水名誉教授=5月13日、平成新山

 43人の犠牲者を出した1991年6月3日の雲仙・普賢岳大火砕流惨事からきょうで33年となった。今年4月、改正活火山法が施行され、火山の調査研究を一元的に推進する火山調査研究推進本部(火山本部)が文部科学省に設置された。同本部の火山調査委員会委員長に就任した清水洋・九州大名誉教授(67)が長崎新聞社のインタビューに応じ、今後の火山調査研究や防災のあり方について語った。

 -国内の活火山の状況は。
 日本には世界の火山の約7%が集中している。国内の活火山は現在111あり、このうち雲仙岳を含む51火山は、噴火の可能性や社会的な影響を踏まえ、気象庁が常時観測の対象としている。

 -火山調査研究推進本部が設置された意義は。
 火山の調査研究は、これまで大学や研究機関などが個別に研究費用を調達し、学術研究として取り組んできた。火山噴火予知連絡会も気象庁長官の私的諮問機関であり、法律的・財政的な裏付けがあるわけではなかった。火山調査研究推進本部の設置により「国家百年の計」に基づき火山を観測する基盤ができた。

 -火山の研究体制の現状は。
 火山観測に携わる国内の研究者は、技術職員も含めて“40人学級”と言われるほど少ない。しかし、2014年に御嶽山で戦後最悪と言われる噴火災害(死者・行方不明者63人)が起き、文科省が16年から10カ年計画で次世代の火山研究人材を育成するプロジェクトを進めている。

 -御嶽山や普賢岳噴火災害を踏まえた教訓とは。
 普賢岳噴火災害も前回の噴火から198年ぶりだったように、火山は人の生涯より長いスパンで活動する。平常時から基準となるデータを蓄積し、その結果を分かりやすく社会に伝達することが防災に向けて大切だと考えている。

 -活火山法改正により、8月26日が「火山防災の日」となった。
 浅間山に日本で最初の火山観測所が設置された日を記念して制定された。普賢岳の大火砕流惨事が起きた6月3日の「いのりの日」を含め年に1、2回でも、家族の避難先など火山防災について話し合う機会にしてもらえたらと思う。

 【略歴】しみず・ひろし 前橋市出身。東北大理学部、同大大学院理学研究科博士後期課程修了。1985年に九州大島原地震火山観測所(現・地震火山観測研究センター)の助手に採用。助教授、教授を経て2004年度から20年度まで同センター長。19年7月から気象庁火山噴火予知連絡会会長を務めている。

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