短大生は減る一方だけど…「4年制化はしない」 県立短大の在り方議論する有識者委員会に疑問の声 鹿児島

魅力ある県立短期大学づくり検討委員会の座長を務める鹿児島経済同友会の津曲貞利特別幹事=5月31日、鹿児島県庁

 学生募集に苦戦する鹿児島県立短期大学の活性化策を探るため、県が設置した有識者委員会による議論がスタートした。全国的に短大の学生数は右肩下がり。一方、若者の流出を食い止めようと、公立大は急増している。県は「4年制化は前提としない」と予防線を張るが、学校関係者からは制約を課さずに幅広い議論を望む声が上がる。

 「なぜ短大ありきなのか」。5月31日、県庁で開かれた初会合。傍聴した県栄養士会の油田幸子会長(76)は憤った。短大だけでは管理栄養士の受験資格が取れないため、長年、県短の4年制化を求めてきた。卒業生でもある油田会長は「一部を4大にするなど、何か工夫できないか考えてほしい」と注文する。

 県短同窓会の木島隆会長(75)も議論は歓迎しつつ、「県短の魅力が向上しても、4大志向は高まっていく。受験生のニーズを念頭に、広い視野で議論してもらいたい」と要望した。

 私立も含む全国の短大生は、ピークだった1993年度の53万人超から2023年度は8万6000人となり、8割以上減った。少子化に加え、女性の社会進出で4大人気が高まったことなどが要因だ。鹿児島県内でも、93年度の5528人から、23年度は7割減の1689人となった。

 県短では23、24年度、一部(昼間)の文学科など複数学科と、二部(夜間)で入学者が定員に満たなかった。県内の私立短大3校でも近年は定員割れが続いている。

◇相次ぐ閉校

 全国では短大の閉校が相次ぐ。公立短大も96年度の63校から、24年度は14校と、8割近くが姿を消した(うち7校は4大を併せ持つ)。

 一方、都市部への若者流出を食い止めようと、地方を中心に公立4年制大学は急増。経営難に陥った私立大を公立化したり、短大を4大化したりする動きが広がり、89年度の39校が、23年度は100校を数える。

 ただ、少子化で4大入学者数も減ると推計され、文部科学省は25年度以降、大学を新設する場合、学生確保の見通しを厳格に審査することにした。三重県など、公立大新設を検討したが、費用対効果の面から見送った自治体もある。

◇長年の懸案

 鹿児島県短を巡っては長年、4年制化の議論が繰り返されてきたが、資金面や既存の私立大への配慮などがネックとなり、実現しなかった。近年は、県の消極姿勢が際立つ。

 委員会の座長に就いた津曲貞利氏(鹿児島経済同友会特別幹事)は取材に「県短は、全国で見れば元気がいい。まずは魅力向上が先決だ」と強調する。

 鹿児島国際大を運営する津曲学園理事長でもある立場については「4大化を含む在り方検討委員会ならば当然断るが、今回はいかに魅力を高めるかの議論なので引き受けた」と語った。

■鹿児島県立短期大学 1950(昭和25)年開学。一部(昼間)は文学、生活科学、商経の3学科に6専攻があり、二部(夜間)は商経学科がある。4月1日時点で総定員570人に対し547人が在籍、教職員44人、事務職員20人。

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