いわきで武者修行中の大迫塁が急成長中。恩師の森山佳郎監督も称賛「クオリティは間違いなくある。頼もしく思います」

6月2日に行なわれたJ2第18節のいわき対仙台。いわきのMF大迫塁にとっては特別な一戦だった。仙台を今季から率いるのが、森山佳郎監督だからだ。

C大阪から育成型期限付き移籍で今季からいわきに活躍の場を求めたレフティは、かつて世代別代表で指揮を執っていた森山監督のもと、日の丸を背負ってプレー。2019年の10月に開催されたU-17ワールドカップ(コロナ禍の影響で中止)の1次予選にあたるU-17アジアカップ予選で公式戦も戦った。

だからこそ、この仙台戦はチームの勝利を目ざすのはもちろん、恩師の前で自身の成長を示す場でもあった。

プロ入り後はまだ思うような結果を残せていない。神村学園時代は世代屈指の司令塔として活躍し、同級生のFW福田師王(現ボルシアMG)とのホットラインで躍動。正確な左足のキックと確かな戦術眼で鳴らした。

神村学園からC大阪に加入し、さらなる飛躍が期待されていたが、ルーキーイヤーの昨季はルヴァンカップと天皇杯でそれぞれ1試合の出場に終わった。練習試合などで経験を積んだが、与えられたポジションは本来のセントラルMFではなく左SBだった。

もっとも、いわきに活躍の場を移した今季は、昨季とは違ってピッチで結果を残しつつある。

豊富な運動量とキック精度を買われて左ウイングバックで試されると、第7節・秋田戦(0-1)の60分から投入されて新天地デビューを果たした。第8節・藤枝戦(3-0)で初スタメンを飾り、翌節の横浜FC戦(2-2)では得意のFKでプロ初ゴールもマーク。ここ最近は控えに回る試合も増えたが、本当の意味でプロのキャリアをスタートさせたと言えるだろう。

様々な想いが交差するなかで、今の自分を表現すべく大迫は仙台戦で62分に途中出場。1-2の状況下で左ウイングバックのポジションに入ると、正確なクロスから次々と決定機を演出していく。

ボールをうまく引き出しながらアーリークロスを入れるだけでなく、ペナルティエリア左角のスペースを使うプレーでも仲間と連係するなど、新たなポジションで可能性を示した。結果的に敗れたものの、試合後に森山監督も大迫に賛辞を送った。

「やっぱりクオリティは高い。苦しめられましたね。ステップアップしてJ1の舞台で戦ってほしい。まだ若いですから。J2で試合経験をかなり詰めているのは大きいし、クオリティは間違いなくあるので、ゲームの中でチームの勝利や得点に結び付けられる選手になってくれたら。今日の試合で見せてもらったので、頼もしく思います」

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大迫も新たなポジションで手応えを得ている。「去年はセレッソでサイドバックをやっていて、もう少し内側に入って良さを出すことを心がけていたけど、(いわきでは)ウイングバックなのでチームとして幅を取って、縦の上下動が求められている」なかで、中距離ランナーだった祖父譲りの心肺機能を活かして違いを見せている。

もちろん、リーグ戦に出続けているからこその悩みもあり、研究された時に良さを消される試合も少なくない。だが、そうした経験も試合に絡めているからこそ。トライ&エラーを繰り返しながら、自分の可能性を示せているのは成長の証だろう。

キャリアを積み重ね、どんなプレーヤーになっていくのか。高校時代に名を馳せた司令塔は現状に満足していない。次に森山監督と対戦するのは、敵地での第29節。試合後に恩師と談笑したが、その姿はまるで同窓会で再会した恩師と生徒のような雰囲気だった。ユアスタで恩返しをするべく、さらなる研鑽を積んで、また違った姿を見せるつもりだ。

取材・文●松尾祐希(サッカーライター)

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