全国で初めて資本関係のない岩手と香川の運送会社が取り組むリレー中継輸送とは? 物流の2024年問題【トレンドいわて】

今回取り上げるのはトラックドライバーの時間外労働が上限規制された「物流の2024年問題」です。4月の法改正から2か月がすぎ、トラック業界ではどのような影響が出ているのか。岩手県トラック協会を取材しました。

(岩手県トラック協会・高橋嘉信会長)
「荷主さんがこの2024年問題をどのように捉えているかっていう意識は上がってきていると思います」

県トラック協会では荷主の意識の変化で長距離運賃の価格がわずかに上がるなど多少の変化はあるとしていますが、依然として原油の価格高騰が運賃に反映されていないほか、若者の成り手が少ない人手不足など問題は山積みということです。運賃の値上げも交渉しているものの、了承してくれる荷主は少なく、このままではトラック輸送が滞る可能性もあると話します。

(岩手県トラック協会・高橋嘉信会長)
「声を上げたいのは何とか荷主さん我々の実態を聞いてください。ある荷主さんによってはあなたの事業者だけが運送会社じゃないよというような話もある」

こうした物流の2024年問題に向けて、早くから取り組んでいた会社があります。奥州市の白金運輸と香川県の朝日通商の2社です。両者は全国で初めて3年前から資本関係がないにも関わらず協力してドライバーの労働環境改善につながるリレー中継輸送を行っています。

どういうものなのか奥州市から、配送の拠点となる 静岡県富士市への配送を例に従来の輸送方式との違いを紹介します。

まずはこれまでの1人のドライバーによるトラック輸送の流れです。荷下ろしや荷積みも含めて、1人で行うことになります。そのため、トータルで2泊3日の行程になります。また9時間乗車する度に11時間以上の休憩が必要なためその間は輸送がストップすることになります。

一方、4人のドライバーによるリレー中継輸送の場合、ドライバー(紫色)は岩手県内での荷下ろしや荷積みの対応。ドライバー(青色)は、奥州市と中継点である栃木県の黒磯板室IC間の往復。ドライバー(オレンジ色)は、栃木県から、静岡県富士ICの間の往復、ドライバー(赤色)は、静岡県付近での荷下ろしや荷積みの対応をそれぞれ担うことになります。

ドライバーは遠方に行かなくてすむため労働環境の改善につながります。そして、
ドライバーが変わっていることで休憩時間の間も荷物は動いているため、輸送スピードのアップにもなります。

時間外労働を減らす取り組みにもつながるリレー便のドライバーに密着しました。
密着するのはドライバー歴20年のベテラン今野友和さんです。

(井丸貴拡アナ・リポート)
「時刻は午後9時半を回ったところです。奥州市から中継点である栃木県の黒磯板室インターに向けて出発します」

(今野さん)
「がらっと変わりましたね。3日間の関東や東海方面の運行をしてました。仕事の方で時間が取られちゃって個人の方で時間がなかったのでそれを考えると趣味であったり(家で毎日)休む時間が取れるというのは変わったと思います」

まずは休憩地点である東北自動車道・那須高原サービスエリアを目指します。リレー便が始まり毎日家に帰ることができるようになった一方で、残業代が減ったと話します。

(今野さん)
「残業がほぼないので、今の体制っていうのがその残業分がないっていうのと(日中の勤務だと)深夜手当がないっていうので10万円ぐらいは減りましたね。(20年前は)午前中に積んで、お昼に(宮城を)出発して、そのあと翌朝8時に大阪に届ける途中4回30分休憩しただけで荷物を届けたことがありました」

(今野さん)
「国見のSAが中間になってまして、やっと(往路の)中間来たなという感じです」

Q4時間の運転は大変ですか?
(今野さん)
「なんとか、今のところは大丈夫でしたね。(この後は)交代して戻る形になりますね」

30分の休憩を取った後、黒磯板室インターに向かいます。

午前2時40分、待ち合わせの場所となる黒磯板室インターに到着です。およそ20分後、朝日通商のトラックも到着しました。ドライバー同士が引き継いだ後は車両と積荷の確認を行います。

(井丸アナ)
「ドライバーの交代が今終わりました。これから奥州市に向けて再び出発します」

行きと同様、帰りも一度休憩を30分取ります。会社までもうひと頑張りです。

午前8時20分に奥州市の会社に到着したトラックは次に県内に輸送するドライバーに引き継ぎました。リレー輸送前はドライバーが奥州市の会社に戻るまでに約3日間かかっていましたが、現在は分担による作業の負担が軽減し約11時間で会社に戻ってこられるということです。時間外労働を発生させずに物流を持続させる新たな取り組みとして期待されているリレー輸送。

中小規模の運送会社が協力する新たなトラック輸送の取り組みが注目を集めています。

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