まちのスポーツ用品店の思いとともに引き継ぐ「地域に根付いたビジネスモデルは拡大のチャンスにも」=静岡・御前崎市

後継者がいないことで一時、閉店を考えていた静岡県御前崎市の老舗スポーツ用品店。金融機関の支援を受け、6月、第三者に事業を引き継ぐことになりました。手を挙げたのは、静岡、神奈川、山梨に多くの店をもつスポーツ用品店です。

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1960年に創業した御前崎市の「チヨダスポーツ」です。学校の体操着やスポーツ少年団のユニフォームなども手がけ、地域に根付いた店です。

<チヨダスポーツ 澤入こまつ前代表(83)>
「昔は手で張っていたんだよ。こんな機械なんてなかったからさ。無我夢中にやってきたんだよ」

チヨダスポーツの前代表・澤入こまつさんです。21年前に他界した創業者の夫とともに、店を守ってきましたが、2024年、大きな決断をしました。

<チヨダスポーツ 澤入こまつ前代表(83)>
「当店は、いまから63年前、『チヨダ運動具店』として、たった6帖のスペースを借りて創業しました。たくさんの思いが詰まったチヨダスポーツをどうかお願いいたします」

静岡、神奈川、山梨に展開するスポーツ用品店「シラトリ」に事業を譲渡したのです。理由は、後継者がいないこと。店を閉めざるを得ないと考えていたといます。

<店の人>
「こちらのサンプルが、セカンドと練習用のTシャツになるんですけど」

チヨダスポーツは、地域にとっては無くてはならない存在です。

<少年団に入る親子>
「少年野球のチームにこの子が入るということで、ユニフォームの注文で来ました。団の方からこの店で作ってくれると指定されていたので寄った」

<御前崎市の男性(84)>
「いまはここがあるから、グランドゴルフができる。頑張ってもらわなきゃ、こういう店に」

何とか、店を残す方法はないのか。澤入さんは、地元の信用金庫に相談しました。島田掛川信用金庫は、2013年から事業承継などを支援する部署を設けています。

<島田掛川信金地域サポート部 森崎恭広副部長>
「事業が継続していくことが、持続可能な社会には必要不可欠。取引先も従業員の雇用も、金融機関も地域の発展に寄与できる、これは三方よしの取り組みではないかなと思う」

店を引き継ぐシラトリは、御前崎市の周辺エリアに出店を検討していました。少子高齢化で、スポーツ用品の需要が減るとみられる中、地域に根付いたビジネスモデルは顧客を増やす一つの方法だと考えたのです。

<シラトリ 西丸聡司社長>
「学校への取引は、こちらからニーズを聞き、ご提案をして話し合いをしていくビジネスですので、人もかかるし、時間もかかる。それなりのノウハウが必要な商売で、今のシラトリにはないビジネス」

後継者不足を理由に、黒字経営にもかかわらず、廃業を選ぶ企業は年々増えています。帝国データバンクによると、2023年度だけで586件。前の年度より99件増え、1年間で500件を超えたのは初めてでした。

シラトリは、チヨダスポーツの名前を残し、営業を続けます。前の代表の澤入さんも今後、従業員として店を支えます。

<チヨダスポーツ 澤入こまつ前代表(83)>
「新たな店長も、外商面はやってきていないみたいなので、1年ぐらいは親切に教えないとなと思う。チヨダスポーツに来れば、遠くに行かなくても何でもそろうという店になることを期待しているので、それが楽しみ」

地域に根付いた店が残り、新たなビジネスモデルの拡大にもつながります。

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