苦しんだラツィオでの経験を代表に還元。約7か月ぶり復帰の鎌田大地は意欲十分「求められていることを表現できたらいい」

2026年北中米ワールドカップのアジア2次予選をすでに突破している日本代表にとって、6月のミャンマーとシリアとの2連戦は、9月から始まる最終予選に向けた重要な準備の場になる。

森保一監督も戦い方の幅を広げるべく、活動初日の3日のトレーニングから3-4-2-1や4-3-3などの布陣にトライ。冨安健洋(アーセナル)と相馬勇紀(カーザ・ピア)の右SB、橋岡大樹(ルートン)の左SBと左CBなど、選手個々が代表で経験の少ないポジションに取り組む姿もあり、この2連戦ではやや異なる色合いの代表が見られそうだ。

こうしたなか、昨年11月以来の代表復帰となる鎌田大地(ラツィオ)は、遠藤航(リバプール)とボランチで組んでプレー。トップ下やシャドーに入る場面はなく、今回は得意とするボランチかインサイドハーフで勝負することになりそうだ。

森保監督も今季のラツィオで主戦場としていた役割を尊重し、代表でも近い役割でプレーさせたいと考えている様子。それが今の鎌田の実力を一番出せるという判断なのだろう。

「(マウリツィオ・サッリ)前監督の時はすごくサッカーが難しいなと感じていました。『自分自身がラツィオのレベルじゃないのかな』『やっぱりイタリアのサッカーに合っていないのかな』とも思った。

でも、今の(イゴール・トゥドール)監督は僕がやりたいと言っている6番のポジションで評価してくれた。ドイツとはリーグも違えばサッカーも違いましたけど、フランク(フルト)の時より良くなったと思っているし、代表で求められていることをしっかり表現できたらいいなと考えています」と、鎌田本人も苦しんだシーズンの中で得たものを、今回の2連戦に還元する構えだ。

初日の練習を見る限りだと、森保監督は守田英正(スポルティング)、田中碧(デュッセルドルフ)、旗手怜央(セルティック)の元川崎フロンターレトリオを中盤のユニットと位置づけている模様。彼らを初戦のミャンマー戦で抜擢する可能性が高そうだ。

となれば、鎌田は遠藤と2戦目のシリア戦に出るのではないか。2次予選の同組で最強の相手と目されるシリア相手に、鎌田が攻撃面で違いをもたらすことができれば、チームにとって大きなプラスがもたらされるはずだ。

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まさかの8強止まりに終わった先のアジアカップの準々決勝・イラン戦を振り返っても、久保建英(レアル・ソシエダ)が下がった後に中盤でタメを作れる選手が不在で、日本は次々とボールを奪われ、攻め込まれる形になってしまった。

試合後には「鎌田がいればもう少し時間を作れたし、攻撃を活性化させてくれるはず」といった意見も出たほど。高度な技術とゲームコントロール力を備えた男の復帰を、森保監督も待ちわびたに違いない。

「アジアカップはハイライトは見ましたけど、全部は見てないんで(課題とかは)分からないです。でも、あれだけアジアカップに入る前はチームとしてすごく良かったのに、サッカーってやっぱり分からないなと思いましたね」と、鎌田も自身のラツィオでの境遇と重ね合わせるようにしみじみ語っていた。

今回、日本代表を活性化させられれば、彼自身も再び自信を取り戻せるだろうし、新天地に赴く来季に向けて弾みもつくはずだ。

欧州での報道によれば、フランクフルト時代の恩師オリヴァー・グラスナー監督が率いるクリスタル・パレス行きが本決まりになりつつあるという鎌田。ともにヨーロッパリーグ優勝という栄冠を勝ち取った指揮官のところへ赴けば、確実に出場機会を得られるし、プレミアリーグの強度とスピード感にも適応していける。

そうやって右肩上がりの状態で最終予選にも参戦してくれれば理想的。今回の6月シリーズでその布石を打ちたいところだ。

「自分はボランチだけじゃなく、トップ下やシャドーもできる。両方やれるっていうのは昔から変わりはないと思います。ただ、新天地に行っても、前じゃなくて、6番でやっていくことになると思う。それを踏まえながら、うまく(複数ポジションを)両立させていきたいですね」と意欲を口にした鎌田。

状況に応じて高い位置を取ったり、ゴール前に上がっていくなど、多種多様なパフォーマンスを示し、彼が日本代表にいる意味をしっかりと示してほしいものである。

取材・文●元川悦子(フリーライター)

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