「70、80になってからじゃ遅い」60代の今こそすべきリフォーム【12のヒント】水回りより優先するのは?

今の60代は見た目が若くとてもアクティブ!『60代からの小さくて明るい暮らし』(主婦の友社)から、古い常識にとらわれることなく、自分らしい毎日を送るための住まいの整え方を、リフォームの実績豊富なプロ 田原由紀子さんに伺いました。

Advice
田原由紀子さん
一級建築士。「リブコンテンツ」代表。オーダーキッチンに定評があり、東京・目黒区に体験型のショールームを展開。著書『愛せるキッチン、愛する暮らし』(光文社)も好評。
刺繍デザイナー 青木和子さん宅のリフォーム
https://maturist.jp/articles/10005537
も田原さんが担当。

Tips 01 「どこで、だれと、どんなふうに過ごしたい?」と自身に問いかけてみる

60代は「まだまだこれから!」という年代。この先20年、30年と続く今後の人生を、だれとどう過ごしたいか、イメージを持つことが大事です。老後はのんびり郊外でという方もいれば、交通アクセスのいい都心のマンションでと思っている方もいるでしょう。今の住まいに住み続けるのか、住み替えるのか、都心と郊外などの二拠点生活という選択肢もあります。

80歳で暮らしを変えるのは大変です。60代の今がそのチャンスかもしれません。

Tips 02 これからは「好きか」「嫌いか」で決めていい

60代になると、子どもが手を離れていることがほとんど。リフォームをするなら家族優先ではなく、「わたしの気持ちがアガること」を優先していただきたいです。素材や設備は高価ならいいわけではありませんが、価格優先だとどうしても劣化が早まります。

お手入れのしやすさを優先しても、結局どれもお手入れは必要です(笑)。お気に入りのものだから掃除が苦でなく、きれいになるとうれしい。そんな気持ちが住まいの満足度につながります。

Tips 03 暮らしの「小さなストレス」を解消する

歳を重ねると、いろいろなことが面倒になるんですよね。将来に備えて、最小限の負担で暮らしを保てるようにしておくのは大事なことだと思います。あるお客さまのお宅では、目線の高さにビルトイン電子レンジがあり、明らかに作業の邪魔になっていました。長年暮らしていると、そんな小さな違和感に気づかず、無意識に我慢していることがあるんです。

リフォームまではという方は、整理収納アドバイザーに来ていただくのも一案です。

Tips 04 「片づかない!」の原因は収納が自分に合っていないから

部屋にものがあふれて片づかないという人は、今の住まいの収納が自分に合っていないのかもしれません。料理好きでスパイス類がたくさんあるけれど、収納スペースが足りなくてコンロ周辺が瓶でいっぱいというお宅をよく見てきました。

60代になると好みや定番の品が定まっている方が多く、これから持ちものが大幅に増えることも少ないはず。リフォームでライフスタイルに合った収納を設けて、ものの「指定席」をつくるのがおすすめです。

Tips 05 これから選ぶなら素材感のあるインテリア

私の偏見かもしれませんが、70代80代になってピカピカ&ツルツルしたものに囲まれていると、疲れてしまう気がするんです。プラスチック系の素材はホコリが目立ちやすいですし、ビニールクロスは10年ほどで継ぎ目の部分がはがれてみすぼらしく見えてしまうことも。

無垢材、タイル、しっくい、珪藻土などは、古びてもその経年変化が絵になります。60代のリフォームは、これから一緒に歳をとっていける素材を選ぶのがいいように思います。

Tips 06 早めに行いたいのは水回りよりLDKのリフォーム

優先的にリフォームをしたほうがいい場所は、今まさに困っている部分になりますが、体力的な負担を考慮して検討するのもおすすめです。たとえば、トイレやユニットバスの交換工事はそれほど日数がかからず、施主側の負担も少ないもの。

いっぽうLDKの工事となると、壁材と床材の交換だけだとしても、家具などの荷物をすべて移動させる必要があり、これが結構大変。荷物の移動や仮住まいが必要なリフォームは、元気なうちに行うのが◎です。

Tips 07 家事楽を叶えるなら、とにかく「動線」を短く!

家事負担の軽減には、動線を短くすることがとても重要。料理、洗濯、片づけのときに、歩いて移動する距離をとにかく短くすることを考えます。各部屋のクローゼットを撤去して1カ所にファミリークローゼットを設けると、取り込んだ洗濯物の片づけが楽に。

「上下の動線」も短いほうが楽なので、キッチンの場合は踏み台が必要になる吊り戸棚は見送ったり、足元はかがまなくても引き出せる収納にしたりと、動きの楽さを追求しましょう。

Tips 08 IHなどの新しい設備は慣れる時間も考慮して検討

60代の方のリフォームでは、IHクッキングヒーターを検討する方も多いかもしれません。ガスコンロとIHは一長一短で、どちらがいいと断言はできないのですが、やはり自分の「好き」を軸にして、掃除の楽さやこれまでと変わらない火加減など、どこに魅力を感じるかを考えてみましょう。

そして、新しい設備を導入する場合は「慣れることができそうか」も自身に問いかけを。慣れる時間を考慮すると、導入のタイミングは早いほどいいのです。

Tips 09 夫との良好な関係は「ひとりになれる場所づくり」から

60代前後で夫婦ふたり暮らしの場合、それぞれの個室を希望する方が多いですね。使わなくなった子ども部屋などがない場合も、中央にクローゼットを設けてひと部屋をゆるく仕切り、夫婦それぞれのスペースをつくることは可能です。

夫専用の書斎かデスクコーナーをつくるのもおすすめ。リタイアして在宅時間が増えると、自分の居場所がないと感じる方もいるようです。夫婦円満の秘訣は、ひとりになれる場所があることかもしれません。

Tips 10 予算がなくても壁の1面だけクロスを変えてリフレッシュ!

予算は少ないけれど部屋を変えたいという場合は、「気持ちがアガる」インテリアリフォームがいいかもしれません。たとえば、リビングの壁の1面だけ海外の素敵な壁紙で仕上げてお気に入りのひとりがけソファを置く。味気ない寝室のクローゼット扉をエレガントなかまち扉(枠材つきの扉)に変えてミラーもとりつける、など。

プチリフォームでも好みのコーナーはつくれますし、そんなコーナーがあれば毎日元気に過ごせるのではないでしょうか。

Tips 11 ひとり暮らしなら、優先したいのはご近所さんとの関係づくり

ひとり暮らしの場合、転倒を防ぐためのバリアフリー工事や、防犯用の設備の設置などは、安心・安全につながる大事なこと。それに加えて、いざというときに力になってくれるのは「近くの他人」だったりします。

エレベーターなどで顔を合わせるご近所さんに、「ひとり暮らしなんです」「娘がいるんですが今は遠方に住んでいて」などと差し支えない範囲で身の上を話し、親睦を深めておくと、普段から何かと気にかけてもらえる気がします。

Tips 12 暑さ・寒さ対策を万全にしたい実家リフォーム

リタイアを機に故郷にUターンして、実家をリフォームして暮らそうと計画している方もいることでしょう。一概には言えませんが実家は築年数が経過していることが多く、寒くて暮らせないということがよくあります。

床暖房を設置したりペアガラスの窓にするなど、リフォームでしっかり暑さ・寒さ対策をしておくと、自分が快適に暮らせるだけでなく、人に貸したり売却したりがしやすくなるというメリットがあります。

※この記事は『60代からの小さくて明るい暮らし』主婦の友社編(主婦の友社)の内容をWeb掲載のため再編集しています。


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