なかなか寝つけない、夜中に何度も目が覚める、睡眠不足で日中眠くなってしまう……。マチュア世代の多くが睡眠の悩みを抱えています。睡眠の質を高め、より生き生きと日々を過ごすためのノウハウを、睡眠専門医として数々の指導を行う坪田聡さんにお聞きしました。
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「脳」「ホルモン」「環境」が睡眠力低下の原因
「昔は朝までよく眠れたのに、最近は明け方に目覚めてしまう」「ぐっすり眠れず、夜中に何回も起きてしまう」といった睡眠の悩みを抱える人は少なくない。睡眠を専門に研究する医師の坪田聡さんによると、それらは質の高い睡眠をとる「睡眠力」の低下によって起こるという。
「50代以降になるとだんだん睡眠力が落ちていきますが、これは脳の睡眠中枢の機能が低下してくるためです。女性の場合は閉経をきっかけに、睡眠を助けてくれる女性ホルモンが急激に減少することも影響しています」
また、50代以降は、子どもの独立や夫の定年退職による生活リズムの変化、将来への不安など、自分を取り巻く環境や、心理的なストレスが原因で睡眠の質が悪くなりやすいのも特徴だという。
「とはいえ、加齢による睡眠力の低下は自然なこと。若い頃よりも睡眠時間が短いけれど昼間の活動には支障がない、もしくは夜中に目が覚めてもすぐに眠れる、というようであれば心配しなくても大丈夫です」
50代以降の女性が睡眠の悩みを抱えやすい理由
⚫︎脳の睡眠中枢の老化
⚫︎女性ホルモンの減少
⚫︎環境の変化によるストレス
睡眠障害が深刻化する前に生活習慣の見直しを!
しかし、「眠りたいのに眠れない」「日中のパフォーマンスが低下した」「気分の落ち込みが激しい」など、心身に影響が生じているようなら、睡眠障害の可能性が高い。そうなると生活習慣病や認知症など、さまざまな病気につながることも。特にストレスフルな現代人は、誰でも睡眠の質が低下しやすい環境下にあるので注意が必要だ。
睡眠障害が深刻化する前に睡眠の質を改善するには、①生活習慣を整える、②理想的な寝室の環境をつくる といった方法が有効だ。
「寝る直前にスマホを見る習慣をやめるだけで、睡眠の質が改善することも多くあります。これらを見直し行動を変えることで、ぐっすり眠り、すっきり起きられるようになりますよ」
なお、毎日十分に睡眠がとれなくても、1週間単位で足りていればOKなど、柔軟に考えることも大切だ。
「平日に睡眠不足なら、休日は多めに寝てOK。起床時刻は平日+2時間以内を目安に。もっと寝たいのなら、就寝時刻を2時間早めれば、休日は平日よりも4時間長く眠れます」
睡眠の質を低下させる生活習慣チェック
日頃の何げない行動が、実は睡眠を妨げているというケースは多い。一日の生活習慣を振り返り、NG行動がないかチェックしてみよう。
朝
□ 平日は起きる時間がバラバラだ
□ 休日は平日の起床時刻より2時間以上あとに起きている
□ 目が覚めてもしばらくカーテンを開けない
□ 朝食をとらないことが多い
昼
□ 1日の歩数が1万歩以下
□ 昼寝で30分以上寝てしまう
夕
□ 夕食後3時間以内に寝てしまうことがある
□ 夕食後にコーヒーや緑茶などを飲む
夜
□ 就寝の直前に入浴し、湯船につかっている
□ 就寝の直前までスマホやテレビを見ている
□ お酒を飲んだあと3時間以内に寝てしまうことがある
布団の中で
□ 電気をつけたまま眠ることがある
□ 眠くなっていないのに布団に入ることがある
□ 寝るときも靴下をはいている
□ 布団の中で考えごとをすることが多い
睡眠の質を向上するための具体的な方法は、次回以降にご紹介します。
※この記事は「ゆうゆう」2023年7月号(主婦の友社)の内容をWEB掲載のために再編集しています。
※2023年6月12日に配信した記事を再編集しています。
監修者
医師、医学博士 坪田 聡
つぼた・さとる●雨晴クリニック院長。日本睡眠学会、日本医師会所属。「快眠で健康な生活を送ろう」というコンセプトのもと、睡眠の質を向上させるための指導や普及に努める。2006年に生涯学習開発財団認定コーチの資格を取得し、睡眠コーチングを創始。総合情報サイト「All About」の睡眠ガイドとして情報発信中。