【香港】香港日清、海外市場を開拓[食品] 韓国社買収、本土事業の鈍化補う

香港日清の安藤清隆CEOが24年の戦略について語った=3日、尖沙咀(NNA撮影)

日清食品ホールディングスの香港上場子会社、日清食品(香港日清)が、海外市場の開拓を強化している。景気低迷による中国本土事業の伸び悩みを補うためで、3日には韓国菓子メーカーの買収を発表した。高価格帯商品の訴求も続け、本土では営業の重点地域を内陸部にシフトする。2024年は前年比5~9%の増益を目指す。【菅原真央】

香港日清の安藤清隆・董事長兼最高経営責任者(CEO)が3日に開いた記者会見で24年の経営戦略を語った。香港日清は香港・本土事業を統括する。

同社が発表した24年第1四半期(1~3月)連結決算は、純利益が前年同期比7.3%増の1億1,790万HKドル(約23億4,400万円)だった。売上高は7.1%減の9億6,300万HKドル。市場別の売上高は、香港およびその他アジア(本土を除く)が3.4%減、本土が9.1%減となった。23年12月期本決算も減収増益となっている。

安藤氏によると、売り上げの大きな部分を占めていた広東省など本土南部で新型コロナウイルス禍後に製造業の工場閉鎖が相次ぎ、出稼ぎ労働者の多くが内陸部に戻った影響が22年以降出ている。一方、増益には23年に買収したベトナム日清が貢献した。近年力を入れているプレミアム袋麺の販売が好調だという。

「本土で売り上げを求めて安売りをすれば、競合他社との差別化ができなくなる。本土では増収はそれほど意識せず、海外での売り上げをプラスしていくことで、香港日清全体としての成長を目指す」(安藤氏)として、本土経済が低迷している間は海外への投資を強化する方針だ。

香港日清は3日、韓国菓子メーカーのケミフードを買収すると発表した。480億ウォン(約54億円)を投じ、ケミフードの株式100%を取得する。ケミフードは「KEMY」ブランドで穀物を使ったクリスピーロールを製造販売している。

香港日清はケミフードの経営改善や輸出面で協力する一方、ケミフードの韓国内ネットワークを活用した日清製品の拡販も進める。安藤氏は「広東省が伸ばしにくくなっている分、韓国の会社とのシナジー(相乗効果)を見いだし、上乗せできる売り上げをつくっていきたい」と説明した。

域外ではこのほか、23年12月に台湾で営業拠点となる子会社を設立した。従来は現地の卸売業者を通じて事業を行っていたが、現地人材によるチームを立ち上げ、取引と売り上げのさらなる拡大を目指す。

ケミフードの主力製品(香港日清提供)

■本土は内陸部を強化

本土では西南、華中地域など内陸部で需要が増えてきている。同社は内陸市場を強化するため、本土に約70カ所ある営業所の統廃合を進め、沿岸部から内陸部に重点をシフトしていく考え。安藤氏は「営業体制のトランスフォーメーションがどれだけ速くできるかが成長の鍵になると考えている」と強調する。

営業面では「カップヌードルプラスワン」を戦略に掲げ、主軸のカップヌードルにプレミアム袋麺を併せて提案する。スーパーマーケットや小売店では、今年も大規模な試食販売を実施する。昨年は本土の約600万人に日本製と同じ仕様のカップヌードルなどを試食提供したが、今年は試食にプレミアム袋麺などを加える。

安藤氏は昨年を振り返り「試食を入れたエリアは客が戻り始めているので、効果はある」と手応えを語った。

■香港は観光客に期待

香港市民が週末などに隣接する広東省深センなどへ出かけて消費する「北上消費」を巡っては、冷凍食品など非即席麺事業が打撃を受けていると指摘した。ただ、香港で過ごす平日の出費を抑える考えから即席麺の需要は伸びているという。戻りつつある本土からの旅行客も、即席麺の売り上げに貢献している。

安藤氏によると、円安が続く中、旅行で出かけた日本で日清の製品を安く買う香港人が増加した。輸入品の割高感をなくし、香港での購入を促すため、日本で販売している商品とほぼ同様の味の商品の現地製造を進めている。現在は「カップヌードル」の3種と「チキンラーメン」、「ラ王」を日本とほぼ同じ価格で販売できているという。

安藤氏は香港日清の24年の利益成長目標について「本土の経済状況が大きく変わらなければ、前年比で1桁の半ばから後半の成長を目指したい」と述べた。

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