「同じ被害を起こさない」 排水施設の「基準」見直しへ カギは「耐水化」 浸水被害地域の対策とは=静岡・沼津市【わたしの防災】

2023年6月、台風2号の影響で、沼津市などで発生した浸水被害から1年が経ちました。頻発する大雨災害に対応するためのキーワードは「耐水化」。現場では、同じ被害を防ごうと模索が続いています。

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「腰まで浸かっちゃってる」

2023年6月2日、濁った水が押し寄せたのは、沼津市大岡にある病院です。浸水の深さは、1メートル50センチに達しました。

台風2号の接近で、記録的な大雨となった沼津市。こうした事態を想定して準備していたのが、病院の横にある白滝排水機場です。

雨水を狩野川に排出するためのポンプを備えた施設ですが、期待とは裏腹に、電源や操作盤などが水没し、排水機能が停止してしまったのです。

<沼津市河川課 手塚浩司主任>
「この辺りまで水が来るような形で浸水してしまって。電気がショートしてしまって、もう使えなくなってしまう形に」

浸水被害から1年が経ち、配電盤や操作盤は修理を終えて、ポンプも動くようになりました。ただ、“完全に元通り”とはいかないようです。

<沼津市河川課 手塚浩司主任>
「ポンプを操作、動かすために発電機の電源が必要なんですけど、発電機2台とも浸水してしまった」

この排水施設は、狩野川の水位が上昇した時、
▼ポンプ付きの水門を閉めて、狩野川から小さい川への逆流を防ぎながら、
▼ポンプを作動させて、小さな川の水を狩野川に捨てる役割を果たします。

本来、ボタンをひとつ押せば、すべてが連動して、自動で排水を始める仕組みです。

しかし、全ての動力源である発電機は、まだ交換用の新品ができていないため、レンタルで賄っています。以前のように自動での排水はできず、雨が降りそうになると、職員を配置して手作業で発電機を動かします。

同じ被害を起こさない。市が急ぐのは、施設そのものを浸水に強くする「耐水化」です。

沼津市内の別の排水施設です。

<沼津市河川課 手塚浩司主任>
「このコンクリートから上の『蓋がしてある部分』がかさ上げしたところ」
Q.今これプラス何センチ?
「プラス50センチになります」

こちらでは、電気設備が水に浸からないように、かさ上げの対策を済ませました。こちらの地域では数年に一度、浸水被害が起きていて、“排水機能の確保”は地元住民にとっても安心材料です。

<地元に住む排水施設の操作員 山本弘一さん>
「動いてるってことだけでも、住民の安堵感っていうのはありますよね」

市が管理する排水施設は31箇所あり、ポンプや水位計を増やすなど、記録的な雨を前提に「耐水化」を急いでいます。

<沼津市河川課 長嶋晃令課長>
「耐水化、とにかく水につかない、とにかくポンプを動かし続けなきゃならないっていうことを心がけてやっていきたい」

「何十年に一度」という大雨がここ数年、たびたび発生しています。過去の計画では十分としていた「想定」や「基準」の見直しの必要性に迫られています。

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