【6月6日付社説】規正法改正案/場当たり対応で心もとない

 これで「政治とカネ」の問題が本当に根絶できるのか。議論を尽くさぬまま、その場しのぎでまとめられた改正案では心もとない。

 自民党派閥の政治資金パーティー裏金事件を受けた政治資金規正法改正案が、衆院政治改革特別委員会で、与党と日本維新の会の賛成で可決された。きょう本会議で採決、衆院を通過する見通しだ。

 改正案の修正を巡る自民の対応はお粗末だった。政党から議員に支給される政策活動費の使途公開の対象について、自民は改正案で「50万円超」と規定したものの、全面公開を求めていた維新と党首間で合意文書を交わした段階では「10年後に領収書、明細書とともに使用状況を公開する」としていた。しかし自民が3日に示した修正法案では「50万円超」の規定は変更されなかった。

 これに維新が猛反発し、再修正で規定は除外されたが、自民が全面公開に消極的だったのは国民からも理解されないだろう。

 政策活動費は不透明な政治資金とされ、「政治とカネ」の問題の温床の一つだ。改正案に領収書の全面公開が盛り込まれたのは前進だが、なぜ公開が10年後なのか―など疑問が残る。野党からは、領収書が黒塗りになる可能性なども指摘されている。

 改正案は今後、参院で審議される。まだ決まっていない政策活動費の使用上限の金額、領収書の管理、公開の時期や実施方法などについて具体的に議論し、国民が納得できる結論を示すべきだ。

 自民党総裁の岸田文雄首相の対応にも問題がある。当初、「与党を超えた幅広い合意形成を目指す」との意向を示していたが、首相は維新との合意を優先させ、トップダウンで維新との合意文書を取り交わしたとされる。

 政治資金パーティー券購入者名の公開基準額も首相が主導し、自民案の「10万円超」を引き下げ、公明党が求めた「5万円超」を受け入れた。こうした党内の議論を経ない政策決定は健全ではない。党内外で意思疎通できず、機能不全になっているとの指摘もある。自身の政権延命を最優先にしたとも受け止められる対応で、トップにふさわしいか甚だ疑問だ。

 全ての野党が主張している企業 ・団体献金の禁止、連座制の導入は盛り込まれなかった。政治資金を巡っては、自身が代表を務める党支部などに全額寄付し、所得税が一部控除される税優遇を受けていた議員も明らかになった。

 現状の改正案だけでは再発防止や国民の信頼回復は到底難しい。抜本的な改革を進めるべきだ。

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