【本紙記者ルポ 富山県東部豪雨1年の立山町】山肌崩壊、土石流の爪痕 林道復旧手つかず

林道茨谷線の山腹崩壊現場。現在も斜面の変化のモニタリングが続けられている

 昨年夏に富山県東部を襲った豪雨災害から今月末で1年となる。立山、上市両町を流れる白岩川では昨年6月に堤防が決壊し氾濫。立山町の山間部では土砂崩れや土石流などが相次ぎ、林道が170カ所にわたり被災した。2024年度、復旧工事に本格着手するのに合わせ、町が5日行った山間部の被災現場の確認に同行した。

 5日朝、町役場を車で出発し、舟橋貴之町長らが乗る車に続き通行止めの林道茨谷線を進んだ。昨年の豪雨で緊急放流を実施した白岩川ダムから約5キロ上流地点で急に道は行き止まりになった。昨年5月に大規模な山腹崩壊で、斜面が幅約50メートル、高さ約200メートルにわたって崩れた場所だ。その後も相次ぐ豪雨で崩壊した範囲は広がっているという。

 林道が寸断された現場を、国の査定用ルートを歩いて慎重に越えた。滑落すれば谷底だ。思わず足がすくむ。ここから先は徒歩でしか行けないため、いまだ手つかずで、至るところに土砂崩れや土石流の跡が残るのが目に付く。スギの大木も横たわったままだ。アスファルト舗装は流されたり、隆起したりしていた。

 さらに進むと、林道が跡形もない上に、水路などの構造物が激しく損壊した場所が目に飛び込んできた。この現場1カ所だけで復旧事業費は1億円(国補助率99.7%)。被災した170カ所を合わせると事業費は19億円を超える。国の激甚災害に指定され、126カ所は国の補助を受ける。

 来た道を引き返し、今度は林道座主坊線をたどる。大規模な崩壊で露出した山腹の岩肌や、押し寄せた土石流で神社の鳥居の上部だけがのぞく場所にたどり着いた。自然の猛威を見せつけられた。

 今回足を運んだ箇所は被災現場のごく一部だ。舟橋町長は「放置すれば下流部への二次災害の危険がある」と話す。国の事業期間は3年。復旧工事は事業者総出で当たっているものの、道のりは険しいことを実感した。

白岩川堤防復旧、6月中に工事 農地復旧も加速へ

 県立山土木事務所は、今月中に白岩川の堤防の本復旧工事を開始する。立山町四谷尾、白岩、日中の3地区の仮復旧状態の現場は2025年1月末までに完了させる。

 本復旧工事を始めるのは、同事務所管内の白岩川、栃津川、大岩川、上市川の4河川。順次着手し、遅くとも26年1月までに終える。

 同事務所によると、道路や砂防施設を含む被災箇所は計56カ所。白岩川ダムや上市川ダム関連を含まない同事務所管内の復旧事業費は計約22億円。

 立山町は堤防決壊による浸水被害などに遭った農地の復旧を加速させる。農林課は24年度中に完了させたいとしている。

林道茨谷線の土石流の被災現場。道路は根こそぎ崩れてしまった

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