【障害者雇用促進】企業間で手法共有を(6月6日)

 障害者の法定雇用率の段階的な引き上げが今春、始まった。昨年6月時点で県内企業の約4割が達成しておらず、雇い入れの強化に向けた対策を講じなければ、未達成の割合はさらに高まる懸念がある。先進的な取り組み事例を事業所間で共有し、誰もが働きやすい職場環境づくりを目指すべきだ。

 民間企業の法定雇用率は「共生社会」の実現に向け、障害者雇用促進法で定められている。2023(令和5)年度末までは2.3%だったため、従業員43.5人で1人の雇用義務が生じる計算だった。今年4月に2.5%に改正されたのに伴い従業員40人で1人に、2026年7月には2.7%に引き上げられるため、従業員37.5人で1人となる。規模のより小さな事業所での対応が、順次求められていく。

 県内の法定雇用率達成企業の割合は56.7%(昨年6月1日現在)で、福島労働局は法改正に対応するには中小企業への周知が重要になると見ている。ただ、職種によってはどのような業務を、どの程度の時間担ってもらうかなど具体的なノウハウがつかめず、採用に至らない経営者も少なくないのではないか。

 こうした中、障害者雇用のモデルとなる取り組みが進んでいる。「東北電力フレンドリー・パートナーズ」は先ごろ福島市に事務所を設け、来年4月に開業する。6年前に仙台市で業務を始め、約30人が東北電力本店などの名刺印刷、データ入力、資料の電子化作業に当たってきた。県内では特別支援学校の卒業生を5人程度採用し、グループ企業から仕事を請け負う。

 福島市の「とうほうスマイル」では、約20人が東邦銀行の手形・小切手帳、キャッシュカードの製作をこなしている。振り込み確認なども含め、業務を幅広くこなす社員も現れている。

 両社の関係者は「それぞれの個性に応じて役割を決め、仕事を分担するのが肝要」と強調する。地域経済をけん引する企業グループとして、これまで培った実績を体系化し、経済団体などを通じて県内の事業所に紹介してほしい。就労現場で実際に働き方に触れる研修も有意義だ。障害者雇用の充実は、産業界の課題の人材確保にも寄与するだろう。(菅野龍太)

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