抜け道

 「通行禁止」という貼り紙が「ああ、この道は向こう側に通じているのだ」というお知らせになってしまう…。〈『通り抜け無用』で通り抜けが知れ〉はそんな現象を笑った江戸期の川柳だ。中学校の国語の時間に教わった▲その伝でいくならば「規正法」という名の法律が存在していること自体、「政治資金」の周辺では、あれこれ“規(のり)を外れた事態”が起きてしまうということの表れなのかもしれない▲政治資金規正法ができたのは戦後間もない1948年のこと。第1条は〈国民の不断の監視と批判の下に〉〈政治活動の公明と公正を確保し〉〈民主政治の健全な発展に寄与する〉とうたう▲政治とカネの問題が表面化するたび改正が重ねられてきたが、穴だらけの“ザル法”という悪評は消えたことがない。「自分の手足を縛るのだから、厳しいルールになるわけがない」という諦め交じりの解説はもはや定番▲自民党派閥の裏金事件を受けた政治資金規正法の改正案が昨日の衆院政治改革特別委員会で可決された。さまざまな論点を巡る政党間のドタバタ、いや攻防は、何がどう決着したのか正直なところ理解が追いつかない▲ああでもない、こうでもない、と抜け道の道幅を議論し続けていただけのように思える-と要約するのはいくらなんでも乱暴か。(智)

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