区内企業 循環型農法でイチゴ生産 水耕×養殖 農福連携も 横浜市港北区

システムを説明する(株)アグリ王の石田さん(右)と(株)アクポニ研究開発部の怒和亜里寿さん。写真中央にあるのがろ過装置と微生物が入ったタンク

新横浜に本社を置く奈良建設(株)のグループ会社で、閉鎖型植物工場の運営や栽培システムの販売などを行う(株)アグリ王(新横浜)では現在、水耕栽培と水産養殖をかけ合わせた次世代の循環型農業「アクアポニックス」を活用したイチゴ栽培の実証実験が行われている。アクアポニックスは高い生産性と環境配慮の両立ができる農業として国内外から注目が集まっており、同社で5月29日に行われた報告会には多くの報道陣が集まった。

アクアポニックスは、自然の生態系をもとに開発された、水耕栽培と水産養殖を同時に行う新型農法。魚の排泄物が混ざった養殖水を微生物で分解し水耕栽培に使用、きれいになった水をまた養殖水に使う循環型の仕組みとなっている。農場からの排水を一切なくし、魚のふんに含まれるミネラル分を植物の肥料に転換。水槽の水替え、土作りや水やり、除草などの作業が不要なため、生産品も安全性が高いとして、世界的に広がりを見せている。

同社では、かねてより付き合いのあった専門企業の(株)アクポニ(中区)と共同で、2023年3月からイチゴ「よつぼし」30株の水耕栽培と、ニシキゴイ10匹の養殖によるアクアポニックスの実証実験を開始した。

果糖2倍

同年4月下旬から開花が始まり、5月から収穫を開始。収穫は週2回のペースで1年間続けられ、平均1株27・2個の果実を収穫した。イチゴは一般的なものに比べ、約2倍の糖度を計測。また従来の植物工場に比べて水を30%、肥料を90%ほど削減するなどの成果が見られた。果実重量は平均6・8g(出荷サイズとしてのSサイズ)と小さいため、今後はハチや風を利用するなど、受粉方法を変更するなどしてサイズアップを図る。さらに養殖におけるエサの原料に、ビールかすなどの食品製造時に排出される廃棄物を利用するなど、地域社会における資源循環も目指す。「市内には食品会社が多い。様々な組合せを検討していきたい」とアグリ王担当部長の石田健治さん。

また、これまでも障害者が就労しやすい閉鎖型農場において「農福連携」を推進する取組みに注力してきた同社。「受粉や栽培管理など、やれることがたくさんある」(石田さん)として、障害者の就労や生きがいづくりの場を生み出すとともに、「高齢化が進み農業分野における新たな働き手の確保につなげられる」と期待を寄せる。

アクアポニックスの仕組み

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