若き表現者工芸界に 福島県展最高賞に本柳幸音さん 福島県白河市 伝統だるま職人へ奮闘 造形技術「宝」に注ぐ

受賞を励みに伝統工芸の担い手になりたいと誓う本柳さん

 福島県内最大の美術公募展・第78回県総合美術展覧会(県展)の受賞者が5日、発表された。最高賞の県美術大賞には白河市、本柳幸音(さちね)さん(22)の彫刻「気化(きか)」が選ばれた。受賞作は福島大人間発達文化学類の卒業制作で手がけ、今春から市内の白河だるま総本舗渡辺だるま店で働く。幼少期から親しんできた絵画と、大学で磨いた立体造形の技術をだるま作りに注ぐ。「古里を代表する伝統工芸の担い手になりたい」。受賞の栄誉を励みに職人としての将来を見据えている。

 本柳さんは白河市出身。幼い頃から絵を描くのが好きだった。白河旭高で美術部に入り、油絵など絵画にのめり込んだ。友人と美術館やギャラリーに足を運んで芸術を探究した。彫刻との出合いは、芸術の道を歩もうと進んだ福島大人間発達学類芸術・表現コースの授業だった。多角的な視点で作品と向き合える立体表現の世界の面白さに魅了された。受賞作は半年ほどかけて仕上げた。

 学生時代まで磨いた技術を生かせる仕事として、地元白河を代表する伝統工芸を選んだ。白河だるま総本舗渡辺だるま店の従業員として、観光施設「だるまランド」で絵付けを担当している。

 白河だるまは、地元出身者として昔から身近な存在で、住民にとって「地域の宝」であることは理解してきたつもりだが、実際に製作に携わることで、伝統工芸の力を改めて強く感じているという。現在は、サンプルを見ながら店頭に出す商品に色付けしたり、柄や顔を描き込んだりしている。柄の配置や筆遣いで仕上がりが変わり、表現者としてやりがいを持って作業に臨んでいる。入社から2カ月が過ぎた自己評価は「苦戦している。作業の幅が狭い」と厳しいが、「早く一人前の職人になって型作りにも携わりたい」と意欲に燃えている。

■「才能発揮して」 白河だるま総本舗の渡辺さん

 白河だるま総本舗14代目の渡辺高章さん(31)は「才能のある若者が素晴らしい賞に輝いてくれて光栄だ。自分の才能を発揮してほしい」と今後の職人としての飛躍を期待している。

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