内灘海水浴場を今夏断念 内灘町 復旧優先、人手足りず

家族連れでにぎわう内灘海水浴場。新型コロナ前は大勢の人が訪れていた=2018年7月

  ●海岸隆起、施設損傷…能登は対応様々

 内灘町は6日までに、今夏の内灘海水浴場の開設を断念した。能登半島地震からの復旧・復興を優先し、運営に当たる人手を確保できないと判断した。内灘以北でも、地震による海岸隆起や施設の損傷を理由に営業を取りやめる海水浴場が多い。今年は新型コロナの影響がなくなり、本格的なにぎわいが期待されただけに観光関係者の落胆は大きく、監視員不在に伴う水難事故の増加を懸念する声も上がる。

 内灘町によると、海水浴場の開設には、石川県の条例に基づいて監視員の配置や更衣室、救護所の整備が必要で、期間中は遊泳エリアを区切るなどの作業もある。町は液状化被害を受けた北部の復旧が進まない中、海水浴場に十分な人員を回すのは難しいと判断し、6日の町議会6月会議で方針を示した。

 町は監視員を配置しない代わりに、警察や海保、消防などと定期的な巡回を行うことで利用者の安全を確保する。

 内灘海岸では、不法占用の状態となっていた旧浜茶屋が県による行政代執行で今年2月に撤去されたばかりで、町観光ボランティア代表の竹村文子さん(72)は「今年は期待していたので残念だが、地震で職員の手が回らないのは分かる」と話した。

  ●千里浜など営業

 内灘以北では、奥能登を中心に計7カ所が海水浴場の開設を取りやめる。このうち輪島市の袖ケ浜は、地盤の隆起によって海底が砂場から岩場に変わり、海水浴客が足をけがする恐れがあるため営業できないという。

 七尾市の八ケ崎、マリンパーク、野崎松島の3海水浴場は、管理棟の漏水や砂浜の地割れ、同市崎山地区にある鵜浦海水浴場は休憩施設が傾くなどしており、いずれも運営を担う地元町会が開設を見送った。能登町の恋路も営業を断念した。

 珠洲市の鉢ケ崎、見付の2カ所は現時点で未定だが、市側は「津波の被害や施設の損壊があり、営業は難しいだろう」(観光交流課)とみている。

 一方、羽咋市の千里浜海岸は7月中旬、千里浜浜茶屋組合が営業を始める予定で、宝達志水町の今浜海岸も同じ時期のオープンを見込む。

 能登町の五色ケ浜は、被災した公衆トイレなどの修繕の見通しが立ったため、同15日から8月13日まで営業することにした。町ふるさと振興課の担当者は「地震で子どもたちの遊び場所も限られており、できるだけ通常の状態に戻すことで地域ににぎわいを創出したい」と話した。

 7月17日に開設される志賀町富来地域の増穂浦(ますほがうら)は、地震で海底が50~60センチ隆起したものの、安全が確認されている。白山、加賀両市の5カ所も例年通りのオープンを予定する。

地盤が隆起し、海水浴場がオープンできなくなった袖ケ浜海岸=輪島市鳳至町

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