波紋が広がっている知床半島での携帯電話基地局の整備計画。7日、札幌で自然科学の専門家らによる会合が開かれ、環境省に工事の中断を求めました。
専門家:「一度立ち止まって、本当にこれが必要なのか再考する必要があると思う」「景観をどれくらい損なうか、丁寧に検証したのかよく分からない」。
手つかずの自然が脅かされようとしている、知床半島での携帯電話基地局の整備計画。国の計画では、サッカーコート1面分に相当するおよそ7000平方メートル264枚の太陽光パネルを、電源として設置することになっています。さらに、およそ2kmにわたり土を掘り返して電線などを埋める予定です。
ただ、景観を損ねる恐れがあり、地元・斜里町もいったん工事を見合わせるべきと声明を発表。また、専門家会合では、太陽光パネルの安全上の問題も指摘されました。
専門家:「火災が起きた場合、影響は莫大なものと考えられるわけですが」。
太陽光パネルを巡っては、今年4月、仙台市のメガソーラー発電所で火災が発生。消し止められるまでに1日近くを要しました。
専門家:「火災が発生した場合の対応を考える必要があると思う」。
環境省の担当者:「改めて事業者に確認する形になる」。
懸念は他にも。基地局の建設予定地周辺には、オジロワシの巣の跡が残されていることが判明。5月から着工の予定だった工事は、まだ始まっていません。しかも、環境省はこうした希少動物への影響について、事前に調査もせず整備計画を許可していました。
専門家:「なぜ…、完全にオジロワシの営巣部分と、環境省も分かっていたはず。どうして事前に調査を行わなかったのか」。
環境省の担当者:「この辺りに生息があると認識はしていたが、改変部分に営巣木がない、ササ原だったということもあり、調査までは求めなかった」。
専門家が出した結論は…。
専門家会議・中村太士委員長:「いったん現在の工事を中断して、もう一度調査をきちんとして、地元の方でも必要性も含めてきちんと議論してもらいたい」。
6日、知床の地元・斜里町と羅臼町の町長と面会した伊藤環境大臣は…。
伊藤信太郎環境大臣:「環境省としては、漁業者などの岬利用者の安全確保の公益性を認めた上で、自然環境の影響軽減措置を確認し、やむをえず自然公園法に基づく許可を判断した。引き続き、事業者に希少種への配慮徹底を求める」。
環境省は今後、事業者などに対し工事の中断を続け、動植物などへの影響について調査するよう求めることにしています。
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