少子化加速の東京は今夏マッチングアプリを実用化 官製婚活で1500組結婚の愛媛県のきめ細やかな支援サービス

「極めて厳しい数字」

6月5日の夜、報道陣を前に渋い顔で言葉を絞り出したのは首都・東京のトップである小池百合子都知事。この日、知事に突きつけられたのは東京の未来設計の根幹に関わる数字だった。

「女性1人が生涯に産む子どもの推定人数である合計特殊出生率ですが、東京都のみが47都道府県で唯一1を切り、0.99を記録。都内で産まれた日本人の子どもの数も8万6347人と戦後最少だったのです」(全国紙社会部記者)

出生数の減少は8年連続。このままでは都内の総人口も2030年を境に減少へ転じると見られている。そんな状況を都としても、ただ指をくわえて眺めているわけにはいかないようだ。

「今夏を目処に、都が独自に開発したマッチングアプリの実用化を予定。利用者には独身証明書や年収証明の提出、事前面談まで課す力の入れようです。行政の支援で婚姻家庭を増やし、子どもの数を増やす狙いがあるようで、都知事としても肝いりの政策なんだとか」(前同)

行政機関までもが独自開発を行なうマッチングアプリサービス。行政支援による「官製型婚活」を行なう自治体は、何も東京都に限らない。全国の自治体に先駆け2008年から県による結婚支援サービスを始め、これまでに1500組ものカップルをバージンロードへと送り出したのは愛媛県である。弊サイトの取材に対して、県・少子化対策男女参画室の丹章郎主幹が県独自の取り組みがスタートした理由を話してくれた。

「県としても当時から少子化問題には頭を悩ませていたのですが、国による支援は子育て環境作りに関することばかり。ただ、結婚をしてから子どもができるという人のほうが日本では多いわけです。そうである以上、結婚したい人には結婚しやすい環境を提供しよう、として始まったのが、県による“婚活支援サービス”です」(丹主幹)

■イチゴ狩りや地元のカフェでのランチ会、意外とカジュアルな官製婚活

長屋で家族が生活し、地域住民間で回覧板を渡し合っていた昭和の時代からは一変。日本でも核家族化が進み、地域の交流もなくなった。それに伴い、かつては、結婚適齢期の男女が独り身とあらば、生涯の伴侶を我先にとばかりに斡旋していた職場の上司や、地元の世話好きマダムも姿を消している。

「お見合いを仲介する人の代わりではないですけど、無料で適齢期同士の男女が出会えるサービスを県が提供することで、少しでも県内の婚姻率が上がればという思いがあります。サービスとしては10名〜30名単位の参加者からなるイベントを年に200回近く開催。内容は参加者同士の自己紹介を交えたイチゴ狩りや地元のカフェでのランチ会といったものになりますね。サービス利用者は登録時に、独身であることを証明する必要があります」(前出の愛媛県・丹主幹)

愛媛県では結婚を目指す独身男女へと向けて、出会いの場を提供するだけにとどまらない。

「イベント会場には50代〜60代の男女からなる人生経験豊富なボランティア推進員を配置。会場で会話が弾まない男女がいれば助け舟を出しますし、カップル成立後も交際を続ける上での相談にも乗ります。寄せられる相談は“どこにデートに行ったらよいのか?”や“喧嘩をしてしまったのだけど、どうしよう?”、“どんな服を着てデートにいったら良いですか?”といったものもあります」(前同)

現在、サービスの登録者数は5200人ほど。内訳は男女ともに半数ずつといったところだ。サービスを通じて出会い、結婚したカップルには県から独自のお祝いも用意しているという。

「結婚式には知事から祝電を出しますし、結婚お祝い品として名産品である今治タオルをお渡ししています。サービス導入後に、県内の出生率が上向いたわけではありませんが、利用者は年々増えています。今後、さらに結婚するカップルが増加し、県の盛り上がりにつながればと思います」(同)

他の都道府県に先駆けて始まった愛媛県による婚活支援サービス。行政による婚活支援が一般化するのか、今後に注目だ。

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