“同性同士”の恋リア『ボーイフレンド』制作の裏に覗く韓国カルチャー 地上波放送可能性を専門家が分析

※画像はNetflix Japanの公式インスタグラム『@netflixjp』より

才色兼備の男性が複数の女性参加者の中から真実の恋の相手を探し出す大人気の『バチェラー・ジャパン』(Amazon Prime Video)など、数ある映像配信サービスのコンテンツの中でも視聴者から群を抜いて高い人気を集めるのが、恋愛リアリティー番組だ。

そんな大盛り上がりの恋愛リアリティー番組戦線に現在、大きな変化が起きようとしている。

「Netflixから、海辺にたたずむビーチハウスに集まった男性9人の恋模様を描いた『ボーイフレンド』の配信が7月9日より開始されることが発表されました。公開された予告編の動画は“キスをすれば本当に好きか分かるんだと思う”とのセリフから始まり、見る人をドギマギさせます」(トレンドライター)

現にSNS上には、《ボーイフレンド見るためにネトフリ加入しようか考えてる》や《キュンキュンしたい彼氏欲しい》と放送を待ち望む視聴者の声があふれている。

これまでは、美男美女が織りなす恋物語が視聴者の視線をくぎづけにしていた恋愛リアリティー番組。その常識を覆す同性同士の恋愛事情に焦点を当てた本作は、なぜ制作されるに至ったのか。動画配信サービスABEMAの立ち上げにも携わった元テレビ朝日プロデューサーの鎮目博道氏は、弊サイトの取材に対し、「まず1つは、制作者サイドもネタが尽きてきたところはありそうです」と背景事情を推察する。

「恋愛リアリティー番組は、他の番組と似たような番組を作っても視聴者に“他の2番煎じ”と見られてしまいます。それでは視聴者がついてこない。番組内でさまざまな制限やルールを設けることで、他の恋愛リアリティー番組とは違うと視聴者に感じさせなければいけないんです。

『ボーイフレンド』はLGBTQの人の恋模様に焦点を当てた番組作りを行なうことで、制作サイドは斬新さを打ち出そうとしたのではと」(鎮目氏)

恋愛リアリティー番組の中心となる視聴者層は10代〜20代の若年層。若年層の間で人気を集める韓国ブームも、男性間の恋模様を描いた恋愛リアリティー番組の制作には関係していそうだ。

「Netflixで『僕らの恋愛シェアハウス〜Boys Love ∞〜』という韓国人の男性8人が共同生活をし、その中から将来のパートナーを探す番組が2022年と23年に配信されました。

今や音楽やファッションに限らず、ドラマもテレビ番組も韓国発のコンテンツが日本でヒットする時代です。恋愛リアリティー番組も韓国で流行ったパッケージが日本に持ち込まれたということなのではと」(前同)

■地上波テレビでの放送の可能性は

同性同士の恋愛模様を描いた恋愛リアリティー番組『ボーイフレンド』。現に番組の予告編映像にあわせて動画内で流れた音楽は、韓国の2人組インディーズロックバンド・Glen Checkによる音楽。番組の紹介画像も韓国出身のイラストレーターで、インスタグラムのフォロワー数2.9万人のSon Eunkyoungが手がけており、番組には韓国カルチャーの影響が色濃く反映されていることもうかがえる。

同性同士による恋愛リアリティー番組という切り口、それに最新の流行カルチャーを掛け合わせたことで、攻めた番組作りとなりそうな『ボーイフレンド』。配信ではなく、地上波テレビで同じようなコンテンツ作りを行なうことは難しいのだろうか。

「できると思います。ただしテレビ局の場合、企画を通す管理職がリスクを避けたがる。『ボーイフレンド』がNetflixで成功すれば、同じような番組が地上波でも放送される可能性は十分にあります」(前出の鎮目氏)

恋愛リアリティー番組において同性同士を物語の主軸に据えるという番組構成も、地上波放送をする上でプラスに作用するそうだ。

「ナショナルクライアントを筆頭に多様性を掲げる企業は少なくありません。さまざまな家族の形やパートナーの関係が認められ始めている世の中で、同性同士の愛を正面から捉える番組作りを恋愛リアリティー番組で行なえば、スポンサー集めに困ることはないでしょう」(前同)

さまざまな手法、アイデアで制作される恋愛リアリティー番組。新番組『ボーイフレンド』は新たなムーブメントを起こせるか。

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