“岩田節炸裂”の優勝会見 ツアー6勝目の岩田寛が大会前後にあったエピソードとは?

岩田寛が初メジャー制覇(撮影:鈴木祥)

<BMW日本ゴルフツアー選手権 森ビルカップ 最終日◇9日◇宍戸ヒルズカントリークラブ 西コース (茨城県)◇7430ヤード・パー71>

「お腹減りました」。優勝会見のとき、報道陣にプレーオフを制した“今”の気持ちを聞かれると素直に切り出す岩田寛。「“今”だと、そうです。カップに入れたときとは気持ちが違いますね。入れたときは、“疲れた”って感じです」。早速、会見場を笑いに包んだ。

トータル13アンダーで終え、同スコアで先に待機していた石川遼とプレーオフへ突入。1ホール目に1.5メートルのパーパットを沈め、ツアー6勝目、メジャー優勝を挙げた。プレーオフ前は「プレーオフで勝ったことがないんですよ。なので、プレーオフか…と思って、冷静でした」と気負うことなくティオフしたという。

1打目はドライバーでフェアウェイ右に打ち、2打目を7番アイアンでグリーン奥のギャラリースタンドにボールがあたった。ドロップゾーンからのアプローチは、砲台になっておりピンまで20ヤードもなく難しいシーンに。そこをしっかり寄せて入れるというベテランプロの意地を見せた。

大会最年長Vという記録に「きついですね~。若い子と回ったんですけど、気持ちよくみんな打つんですよね」と年齢の差を感じる岩田。それでもこうして年齢に劣らない強さがある。「ただ自分がやりたいことしかやっていないです。トレーニングとか」と周りに左右されず自分のペースを崩さないところが岩田の持ち味であり、長年ツアーで戦える理由に違いない。

4日間を振り返ってもらうと「分からないですけど…」と持ち前の岩田節を炸裂。しかし、大会開催前にこんなエピソードがあった。

「(宍戸ヒルズCCで)練習しているときとか、メンバーさんは僕に話しかけないで、マネージャーに話かけるんです。『このコースはベテランじゃ勝てない』って僕の目の前で言うんですよ。それを何年も言うから腹立っていたんです(笑)」

岩田は感情をあまり表情に出さないが、この話をしているときは少しだけ悔しそうな顔を見せる。最後は「でも去年2位で、言わなくなったんです(笑)それで今回優勝して、記事を見てびっくりすると思います(笑)そのころ僕は韓国に飛んでいるので、気まずい思いをしなくて済みます」と小さく笑みを見せ、達成感に溢れていた。月曜日には韓国へ飛び、次戦の「ハナ銀行インビテーショナル」(ナムチュンチョンCC)での試合に出場する。

そこでキャディをつとめるのは、今回の大会で石川のキャディをしていた佐藤賢和さん。「気まずいな、と(笑)遼が勝って、『なんかごめんね』って言われるのも余計腹立つし(笑)。なのでPO前に、恨みっこなしねって言いました」とプレーオフ前の出来事を明かした。結果、岩田が勝利したが、どんな会話がされるのか気になるところでもある。

今大会の勝利で手にしたのは、翌年から5年間のシード権。先輩プロの谷口徹には「シードを何年持っていても、勝負は1年ずつだ」と進言があった。“来年もある”という余裕な気持ちではなく、“この一年”と気持ちを締めていく。

岩田のなかでシーズンの目標は「年間2勝」。この優勝は「一旦リセットして、あしたから努力して行きたい」と顔を上げ前を見た。残り17試合ある国内男子ツアーで、また岩田の栄冠を掴む瞬間が見れることに期待だ。(文・高木彩音)

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