<2>継続した先に気付きも いばらの道 希望って何ですか

4月に設置された小山市こども家庭センター。子どもや家庭のさまざまな悩みに寄り添い、妊娠から出産、子育てまで一貫してサポートする=5月中旬

 10.9%―。

 小山市が子どもの保護者対象の生活状況調査を基に2024年3月、5年ぶりに推計した子どもの相対的貧困率だ。子どもの年代など調査対象に異なる部分があるため単純比較は難しいが、実は前回よりも0.7ポイント悪化している。

 20年に策定した「市子どもの貧困撲滅5か年計画」第2次計画では、市内に2カ所ある食事や入浴、洗濯など生活全般をサポートする「子どもの居場所」を24年度までに3カ所とする目標を掲げたが、実現はしていない。

 一見すると「撲滅」は遠い。だが一方で、子どもを支援する新たなメニューも次々生まれてきた。

 市独自のスクールソーシャルワーカーによる悩みを抱える子どもの相談支援。困窮家庭をはじめとした、子どもに無料で勉強を教える「学びの教室」なども始まった。

 第1次計画策定から10年近く。20年に就任した浅野正富(あさのまさとみ)市長は「効果は一定程度出ている」と評価する。

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 「新型コロナウイルスはだいぶ落ち着いたが、資材やエネルギー価格の高騰、そして円安。一般家庭の生活苦はどんどん高まっている」。浅野市長は、市内の子どもの貧困率が改善しない状況をこう分析する。

 設置数の現状維持が続く「子どもの居場所」については、1施設当たりの利用者数が定員の15人に達しておらず、「他の事業とのバランスの中で、3カ所目を優先する状況に至っていない」と説明する。その上で、支援を必要とする子どもや家庭を「本当にごく一部しかすくい上げられていない。需要を掘り起こさないといけない」ことも肌身に感じている。

 市政を預かる身としては子どもの貧困対策だけを進めれば良いわけではない。同市の子ども施策に詳しい元市議は「小中学校の雨漏り対策や道路の補修など、喫緊の課題にお金が必要」と、山積する課題に優先順位をつけて対応せざるを得ない状況に理解を示す。

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 撲滅への途中に横たわるままならない現実。その中で、浅野市長は「継続して取り組んできたからこその気付きがある」と話す。

 例えば不登校で家にいる子どもを見守るために、親が仕事を辞めてしまうことがある。待機児童がおり親が働けず、経済的に苦しくなることもある。子どもを取り巻く課題は複雑で、貧困対策に絞って取り組んでも子どもや家庭の抱える困難は解消しない。そもそも「何が貧困対策であるかの線引き自体が難しい」と感じている。

 市は現在、来年度を初年度とした子ども・子育て支援事業計画の策定を進めており、同計画に子どもの貧困撲滅計画を内包させる方針だ。

 「子どもの貧困をなくすには、あらゆることをやらなければいけない」。手探りの取り組みが続く。

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