「平和都市」実現へ行動目標を 二代目やっさんら「本気で目指す」 ワークショップなど開催 長崎

3月に開いたワークショップで、自身が考える「平和都市」のビジョンや行動目標を語る参加者=長崎市築町、メルカつきまち

 「平和都市って、どんな街?」。平和な街の具体的なビジョンと、それを市民や行政が実現するための行動目標について、長崎などの市民有志が考えている。その名は「平和都市長崎モデル」-。「伝えるだけで終わるのは、もったいない」という思いを行動に発展させていく。言い出しっぺは「二代目やっさん」として平和活動に取り組む諫早市の男性会社員(33)。来年の被爆80年を前に「本気で平和を目指す」取り組みが始動した。
 男性は「やっさん」の愛称で親しまれる長崎市の被爆者、田中安次郎さん(81)を尊敬し、「二代目やっさん」を自称。2014年ごろから被爆遺構を案内したり、インスタグラムで情報発信したりしている。
 「長崎モデル」策定を目指したきっかけは、19年に参加した福島県での災害ボランティア。きれいな大通りの一歩裏には、土砂が入った家々があった。「政治だけではどうしようもない」。自ら行動することが誰かの平和につながると感じた。同時に、平和都市を掲げる長崎全体を「誰かのために堂々と行動できる社会にしたい」と思ったからだ。
 地元に帰り、子どもが生まれた。家庭や仕事を優先しようとした矢先、若者の自殺現場に遭遇。「行動することで失われる命が一つでも減るかもしれない。思うだけでなく、ちゃんと形にしよう」。決意とともに平和活動にギアを入れた。
 昨年10月、イスラム組織ハマスとイスラエルの戦闘が始まった。長崎市民は静かで、関心が薄く見えた。「核兵器廃絶にしかアプローチしないなら、世界に対して(平和都市の)説得力がなくなるのでは」。異なる分野で活動する7人に呼びかけ、昨年末「平和都市長崎モデル策定提言委員会」をつくった。
 3月に市内で開いた初のワークショップ(WS)。学生や社会人約20人が「平和な街のイメージ」「実現のためのアイデア」をグループごとに意見交換した。最後に「行政に求めるアクション」と「自分自身に課す行動目標」をそれぞれ決め、具体性を持たせた。今後もWSを重ね、今年中に行政への提言を目指す。
 WSの後、委員は38人に増えた。さまざまな人が「平和な街とは何か」と語り合い、二代目やっさんは「1人でもアクションを起こしてくれたら満点」と胸を張る。「近所の人や友達に対して行動するその先に平和な社会があると思う。本気で平和を目指したい」。平和な街づくりを「自分ごと」として考えるとともに、安次郎さんら被爆者から託された「核兵器廃絶に挑戦する街」は必ず行動目標に盛り込むつもりだ。
 参加者や委員を募集中。問い合わせは二代目やっさんのインスタグラム(@whatisyourpeace)かメール(nagasaki1up@gmail.com)まで。

© 株式会社長崎新聞社