瞬く間

 ごく短い時間を例えて「瞬く間」という。1回のまばたきで目を閉じている時間は0.2秒とも0.3秒ともされる。「あっと言う間」と比べると、どちらが長いのだろう▲目指すのは、例えで言う「瞬く間」「あっと言う間」なのかもしれない。シチズン時計(東京)が4月、働く400人に尋ねたところ、通勤や朝食といった生活のさまざまな“場面”にかかる時間が、昔に比べて短くなったという▲例えば、仕事がある日に朝食を「取らない」のは17%ほどで、50年前の調査から倍増した。「10分以下」は昔よりも減り、「5分以下」は増えている▲ドラマでも映画でも、数々の作品がネットの配信で見られる時代になったが、主に若い層で「早送り視聴」が増えている。朝食に限らず、生活の多くの場面で時間短縮が広がっているらしい▲電子書籍を含む1週間の読書時間は「ゼロ」が半数近くで、「2~3時間」が3割だった50年前よりも大きく減った。生活の効率化を進める「時短」と察するが、朝食ゼロ、読書ゼロの生活がさて、何かを効率よくするのかどうか▲まばたきの役割はその都度、少々の涙を出し、目を潤わせて保護することだという。活字をたどる営みが心を潤し、その時間が瞬く間に過ぎることもある。心のまばたきもまた、大切なのだろう。(徹)

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