日本バスケ界期待の新星、テーブス流河。「将来的な目標はNBA」来季からNCAAのボストンカレッジ進学へ【アディダスアスリート・インタビュー】

渡邊雄太、八村塁、富永啓生など、日本バスケットボール界は近年、アメリカの大学リーグNCAAを経て、NBA入りを目指す若手選手が増えてきている。

そのなかで今後の活躍が期待されるのが、来シーズンからボストンカレッジへ進学することが決まったテーブス流河だ。同大はNCAAでもトップクラスの強豪カンファレンスACCに所属し、戦いの舞台は世界最高峰。名コーチの父とプロ選手の兄を持ち、新たにアディダス ジャパンとも契約を結んだ20歳の新星を、3月某日に直撃した。

――まずはボストンカレッジへの進学決定、おめでとうございます。決定に至るまで、ほかの大学からも10校ほどオファーをもらっていたと聞きましたが、決め手になったものを教えてください。

テーブス:やはりボストンカレッジはレベルの高いACC(アトランティック・コースト・カンファレンス)に所属しているので、一番上のレベルを目指したいという思いでひとつの目標にしていた部分ではありました。あとは高校もボストンなのであまり離れる必要がないので、それも決め手のひとつになりました。

――ボストンカレッジにはもう足を運んでいるんですか?

テーブス:はい、もう何回も行ってます。施設も凄いです。新しく建てられた練習用のジムがあるんですけど、最先端の機械があって改めて凄い環境だなと思いました。

――ACCはデューク大、ノースカロライナ大など、錚々たる名門校が並ぶトップカンファレンスですよね。そこで戦えることについて今、どんなお気持ちですか?

テーブス:楽しみですね。今シーズンもACCの試合はよく観ているので、自分のスキルがどれだけ通用するかはすごく気になります。ああいう舞台でプレーできることは誇りに思うので、日々努力して、活躍できるように頑張りたいと思います。
――期待の反面、不安もあったりしますか?

テーブス:不安はないですね。次のレベルに行って失敗を繰り返すのは当たり前のことで、それがあって次にどうやって立ち直るかが大事だと思うので。今は自分のスキルに自信を持って挑もうという気持ちでいます。

――進路を決めるにあたっては、お兄さん(テーブス海/アルバルク東京)やお父さん(BTテーブス/富士通レッドウェーブHC)からのアドバイスもあったのでしょうか?

テーブス:そうですね。周りのコーチ陣を含め、両親と海にはたくさんアドバイスをもらいました。ただ、最終的には自分が決めました。

――流河選手は報徳学園の2年時に渡米したわけですが、アメリカでバスケをやりたいということはもともと考えていたんでしょうか?

テーブス:はい。兄が先に行って成長している姿を見て、自分もいつかそうしたいなという気持ちはずっとありました。(兄は)自分とは年齢差がありますが、アメリカに行ってから特に人間として成長したなと感じられました。

――6歳離れている海選手は、流河選手にとってどんな存在ですか?

テーブス:超したい存在ではありますけど、昔から変わらず憧れの存在でもあります。『お兄ちゃんがこういうことをしているから、自分もこうしたい』という気持ちは普段からあるので、憧れの存在です。――プレー面に関して、アメリカに行って最初に感じた壁は?

テーブス:フィジカルですね。特に最初は慣れなかったです。報徳学園の時はチームの中で背の高い方だったんですけど、アメリカに行くと自分が一番小さいという感じだったので、そのなかでどうやって活躍できるかというところは、いろいろと求められました。

――求められたのは具体的にどういった部分ですか?

テーブス:身体の当たりやスピード、試合の展開のペースとか。(日本にいた頃と)全然違いました。自分はダンクができるかできないかっていう(ギリギリの)感じなんですけど、チームメイトは全員ダンクが余裕でできちゃうという……そんな感じです。

――ちなみに現在の身長は? まだ伸びていますか?

テーブス:最近測ってないですけど、184cmくらいだと思います。今回帰国して周りのみんなから『伸びたね』と言われますけど、(まだ伸びているかは)どうですかね、わからないです。ただ、フィジカルが弱点なので、どんどん強くなっていきたいです。
――流河選手は得点力のあるポイントガードという認識なのですが、そこは自身でも強みにしている部分ですか?

テーブス:はい。得点をする意識は、普段から持つようにしています。アメリカに行って最初の頃はけっこうパスがメインでコーチからも認められてたんですけど、少しずついろいろなバリエーション、ゴール周りだったり3ポイントシュートだったり、ミドルレンジの得点の仕方とかを増やしていって、今は得点能力に自信を持っています。ボストンカレッジにも得点の部分とパスを評価してもらっています。

――逆に大学で伸ばしていきたい部分は?

テーブス:まずは、次のレベルでも同じようなプレーができるようにスキルを磨いていきたいのがひとつ。あとはディフェンスの部分などでフィジカルが弱点なので、その部分を強くしていきたいと思います。

――ここからはNBAについて聞いていきたいと思います。子どもの頃に好きだった選手はいますか?

テーブス:昔はスティーブ・ナッシュ(元フェニックス・サンズほか)が憧れでした。一応、お父さんが現役時代にカナダで一緒にプレーしていたことがあるらしいんですよ。お父さんが20代の時に、ナッシュがまだ17、18歳の高校生で、でもすごく活躍していたというのを聞いて、そこからよく観るようになって、プレーも真似するようになりました。

――そうなんですね。では、現役で注目している選手はいますか?

テーブス:(同じアディダス契約選手の)デイミアン・リラードは前からプレースタイルが好きですね。彼のようにポイントガードだけど、自ら得点しにいくような選手は特によく観ています。――幼少期からNBAが身近にある環境だったのですね。

テーブス:はい、小さい頃から観る機会があって。ただ最近はNCAAの試合の方が観ることが多いですね。

――それで言うと、今シーズンは富永啓生選手(ネブラスカ大)の活躍がありましたが、どういった目線で見ていましたか?

テーブス:富永選手は向こう(アメリカ)でも評判が良くて。自分も身長はあまり変わらないですし、そういう選手が活躍している姿を見ると自分も勇気づけられて、自分にもできるかなと感じることができました。

――富永選手とは直接会ったことはあるんでしょうか?

テーブス:直接はないですが、インスタをお互いフォローしていて、DMを何回か送り合ったことはあります。

――ほかにも仙台大明成高出身の山﨑一渉選手(ラドフォード大)や菅野ブルース選手(ステットソン大)など、NCAAで戦う同世代の選手は多いですよね。

テーブス:はい。一渉さんとブルースさんは一個上ですけど何回も(交流があります)。
――流河選手ら若い世代の台頭を見ると、バスケファンは勝手に『将来の日本代表に!』と期待してしまいますが、そういったプレッシャーを感じることはありますか?

テーブス:プレッシャーはあるんですけど、そちらは気にせず。日々自分がコントロールできること、普段の努力に集中していけば、そういったプレッシャーというのはあまり感じなくなると思いますし、結果はそれについてくると思うので、そういうマインドを常に持ち続けていきたいです。

――ポイントガードとしては接戦のゲーム終盤など、別の種類のプレッシャーを感じる場面があると思いますが、そういう時に心がけていることはありますか?

テーブス:自分の監督から言われたのは、周りのチームメイトだったりコートにいる選手は全員、バカだと思って接してあげろと。それがいいポイントガードだと言われたことがあって、それを意識しています。例えばチームで何かが上手くいかない時に、責任感を持って、チームメイトにアドバイスしたりっていうのは、アメリカで得たスキルです。

――“味方をバカだと思って”というのは、普段以上に相手のことを深く考えてといった意味合いでしょうか?

テーブス:そうですね。ポイントガードというのはやはり、一番責任感を持たないといけないポジションだと思っているので、チームのためにできることは何でもやるというのは意識しています。――ポイントガードとしてアメリカで挑戦する難しさというのは、どのように感じていますか?

テーブス:自分は特別な身体能力があるわけではないし、フィジカルが強いわけでもないし、身長も高くないなか、唯一自信を持って戦えるのがスキルなので、そういった部分を磨いていくことの重要さはアメリカに行って強く感じました。

――日本代表への想いはいかがですか? 今夏は大きな大会も控えていますが。

テーブス:ぜひ立ちたい舞台ではあります。今いるガード陣、河村勇輝選手だったり富樫勇樹選手、自分の兄だったりは憧れの存在なので、自分もいつかああいう風になりたいという気持ちはずっと持っています。

――兄弟揃って日本代表で共闘したいといった話は、お兄さんとするんでしょうか?

テーブス:しますね。やっぱりお兄ちゃんと一緒に代表でプレーするというのは目標のひとつなので、ちょくちょく話はします。

――最後に、来シーズンの抱負と将来的な目標を聞かせてください。

テーブス:大学1年目は、可能な限りプレータイムを勝ち取って、チームを勝たせられるような選手を目指して頑張りたいと思います。将来的な目標としては、NBAに行きたいという気持ちです。

テーブス流河(るか)/Luka Toews
・生年月日:2004年5月12日 ・出身:兵庫県神戸市
・ポジション:PG

父はカナダ人のバスケットボール指導者、現在Wリーグの富士通レッドウェーブで指揮を執るBTテーブスで、兄は日本代表でアルバルク東京所属のテーブス海。
地元の報徳学園高校では1年時からウインターカップに出場し、ベスト8入りに貢献。2年夏のインターハイ後に渡米し、かつて兄が在学していたノースフィールド・マウントハーモン・スクールへ編入、2022年にザ・ニューマン・スクールへ転向し、23年11月にNCAA1部のボストンカレッジへの進学が決定した。
今年5月にアディダス ジャパンとの複数年契約を発表。19歳での契約は、兄の21歳を上回り同社の男子バスケットボールカテゴリーにおける最年少契約となった。

取材・文●ダンクシュート編集部/協力●アディダス ジャパン

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