iPhoneと統合したChatGPT、全機能を使うにはOpenAIのサブスク加入必須

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アップルは日本時間11日午前2時に開催された開発者向けイベント「WWDC」で、iOS、iPadOS、macOSへのChatGPT統合を発表した。この秋にリリースされる各OSの新バージョンにChatGPT機能が搭載され、Siriや文書作成ツールを通じて利用可能になる。

iPhoneのようなプライバシー情報の塊のようなデバイスにおいて、プライバシーと、携帯電話の独自の使い方によってユーザーを理解する非常に個人的なアシスタントとなるSiriが車外のAIを使用することに懸念を感じる人もいるかもしれないが、アップルのCEO ティム・クック氏は「ユーザーの情報に完全にプライベートかつ安全な方法でアクセスし、ユーザーが自分にとって最も重要なことを行えるよう支援する。これはAppleだけが提供できるAI機能だ」と述べた。

冒頭に述べたとおり、ChatGPTの機能はSiriを通じて提供される。たとえばユーザーがSiriになにか尋ねたとき、ChatGPTがよりよい回答やタスクの解決に役立つ場合は、SiriはユーザーにChatGPTを使用することを提案する。そして同意が得られれば、質問、テキスト・文書ファイルまたは画像などをChatGPTに共有し、回答を得る。

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アップルのユーザーは最新のLLMである「GPT-4o」の無料バージョンにアクセスでき、すでにOpenAIの有料サブスクリプションに加入しているユーザーは、アカウントをリンクすすれば有料の追加機能にもアクセス可能になる。

Siriは質問クエリーごとにChatGPTに転送するかどうかを確認するため、ユーザーが意図せずに質問をOpenAIに流すことはない。もしユーザーがChatGPTの使用を断るか、ChatGPTを無効化している場合は、Siriは質問をアップル独自のLLMで処理するため、情報が外部を経由することはない。ChatGPTを使用する場合も、引き渡す画像、テキストその他の情報は、IPアドレスなどの識別子なしで送られ、リクエスト内容も生成した回答をアップルデバイスが受け取った後に破棄されるとのことだ。

いろいろと書いてきたが、すでにiPhoneにChatGPTアプリをインストールして使っているような人なら、これらのことはほとんど気にする必要はないだろう。

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アップルはAI競争において出遅れたというのが世間一般の評価とされているが、WWDCの基調講演終了後に行われたApple Intelligenceについてのセッションで、ソフトウェアエンジニアリング担当上級副社長であるクレイグ・フェデリギ氏はこれを否定している。フェデリギ氏いわく、AIとは製品ではなく機能であり、これまでのiPhoneや他のアップル製品には写真アプリ、テキスト予測、自動車事故検出など、約200もの機械学習モデル(MLモデル)が搭載されてきたと説明、世の中が考えるよりも長くアップルはAIに取り組んでいるとした。

さらに、アップルが社外のAIモデルとの統合をすることについて率直な考えを求められたフェデリギ氏は、現時点でOpenAIが初の大きなパートナーであることは明らかだとしつつ、最終的にはドメイン特化型の独自モデルを導入したいと述べた。ただ、OpenAI以外のAIモデルへの対応についても「最終的にはユーザーが希望するモデルを選択できるようにしたいと考えている。それはGoogle Geminiになるかもしれない。しかし現時点で発表できることはない」と返答した。

ちなみに、WWDCのApple Inteligenceの発表を見たのか見ていないのか、xAIでOpenAIと競合するテスラ、イーロン・マスク氏は「アップルがOSレベルでOpenAIを統合するなら、私の会社ではアップル製品の使用を禁止するだろう。それは容認できないセキュリティ問題になる」とXに投稿した。

マスク氏は「アップルは独自のAIを作成できるほど賢くないのに、何らかの方法でOpenAIがユーザーのセキュリティとプライバシーを確実に保護できると主張するのは理にかなっていない」とも述べた。もしアップルが将来、Google GeminiだけでなくxAIのGrokにも新たな統合のオファーを出したら、マスク氏がどう反応するかが気になるところだ。

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