13役早変わりの市川團十郎 舞台裏は「F1のピットイン」状態「入った瞬間に5秒、6秒」

取材会に出席した市川團十郎【写真:ENCOUNT編集部】

『平家追討』→『平家征伐』言葉遣いも現代の人が分かるように

歌舞伎俳優の市川團十郎が11日、都内で行われた「歌舞伎座『七月大歌舞伎』昼の部『星合世十三團』」の取材会に出席した。

同作は、2019年7月に当時海老蔵だった團十郎が初演。古典歌舞伎の三代名作のひとつ『義経千本桜』のドラマ性に焦点をあて、娯楽性の富んだ演出や新たな趣向、宙乗り、大立廻りなどを取り入れ、源平の時代に生きた人間たちの運命と修羅を描いた物語。7月の歌舞伎座公演の昼の部で再演する。團十郎は、『義経千本桜』でおなじみの左大臣藤原朝方、卿の君、川越太郎、武蔵坊弁慶、渡海屋銀平=実は新中納言知盛、入江丹蔵、 主馬小金吾、いがみの権太、鮨屋弥左衛門、弥助=実は三位中将維盛、佐藤忠信、佐藤忠信=実は源九郎狐、横川覚範=実は能登守教経の13役を演じる。舞踊ではなく演目で主要13役を演じるのは過去に例がない。

13役早替えの大変さを聞かれた團十郎は、「もちろん私も大変なんですけど、もの(衣装)によっては、同じものを2着3着用意しなきゃいけない。なぜなら早着替え中に、(舞台上で)僕と同じことをしなきゃいけない人達が3人、4人いるんです。彼らが同じ衣装を着て、僕が準備している時にがんばってくれる」と早着替えの様子を説明。「舞台裏はF1のピットインみたいな感じで、入った瞬間に5秒、6秒(の世界)でやる。『何かがない状況』がないように徹底して、裏方さんが本当に一生懸命、気合いをいれてやってくれる」と明かした。

「裏方のプロフェッショナルがやるからこそ、歌舞伎ができる。そういうところも歌舞伎座で見てもらえるといいな」と語り、「音楽にしても、御簾(みす)の中はすごく狭い空間で密室。そこに8人くらい男性が、三味線を弾いたり長唄を歌ったり。そういう方々がいるからできている。僕自身もハッキリ言って大変ですが、みんなで一緒に作る」と、チームで創り上げている様子を語った。

さらに、「『三代狂言』と言っても、(その演目名が)出てくる人が何人いるか。義経千本桜は(源平合戦や親狐を思う子狐の気持ちなどストーリーの)根底を知っているから分かるところがある」と語り、「そういったことを知らない人が見てもわかるように、今改正している」と、歌舞伎に慣れてない人にも見やすい工夫を始めているという。「『平家追討(ついとう)』という言葉を聞いてどう感じるか。お祈りするようなイメージになりませんか。でも歌舞伎では『平家追討』は、討つと書いて、『平家を討伐したこと』を言う。そういう言い方を『平家征伐』にしていこう、とか」と、言葉も分かりやすくしていると明かした。

また今回は、外国人観光客を意識しポスターに英語記載も。「口上も英語を入れようかな。今、英語台本はあるけど、そこまでするべきか悩んでいるところ」と明かし、「外国人客が多かった時に英語でしゃべろうかな」と語った。ENCOUNT編集部

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