「布団に入ったらそのまま眠らなくてはいけない」「二度寝はダメ」などの固定観念に縛られていませんか。その考えがかえって快適な眠りを妨げているかもしれません。最新の研究に基づく、覚えておきたい睡眠の新常識を、睡眠専門医の坪田聡さんに教えていただきました。
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朝の二度寝が心を癒やす。20分以内の「ちょい寝」ですっきり
二度寝をしてはいけないと思っている人が多いが、実は心に優しい効果がある。
「ストレスから身を守るホルモン『コルチゾール』は、覚醒直後に大量に分泌されます。これにより、二度寝をすると、ストレスに対する準備がしっかりできてから目覚めることが可能になります」
ただし、ダラダラと寝続けるのは逆効果。「二度寝ルール」を守り、効果的なちょい寝を心がけよう。
二度寝で目覚めが よくなるメカニズム
目覚めた直後に抗ストレスホルモン「コルチゾール」が急激に分泌される
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コルチゾールの分泌によって、心が目覚めのウォーミングアップに入る
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二度寝をすることで自然に目覚めのための入念なウォーミングアップができる
すっきり起きるための「二度寝ルール」
①二度寝はあくまで「ちょい寝」とする
二度寝する時間はちょっとだけ(ちょい寝)にすること。ダラダラ寝続けているとノンレム睡眠の深い眠りに入ってしまい、目覚めの悪さや睡眠リズムの乱れにつながる。
②すーっと眠りに落ちる感覚を味わう
二度寝は、まどろむ程度の浅い眠りで切り上げるのがポイント。夜の寝入りとは異なる、すーっと心地よく引き込まれていくような感覚を味わってみよう。
③三度寝・四度寝はNG
二度寝は1回だけにとどめること。アラームを何度も止めて、三度寝、四度寝……と繰り返すと、かえって目覚めが悪くなるので逆効果。二度寝をしたあとはすっと起きよう。
④二度寝タイムは20分以内
20分以内の二度寝でも満足感が十分に味わえる。もしこの時間で目覚めにくいと感じる場合は、夜の睡眠が不十分だということ。睡眠時間を見直し、調整することが大切。
すぐに眠りにつきたいときは熱めのシャワーを浴びる
入浴して体の内側の深部体温が上がると、その後徐々に下がり、しばらくして眠気が訪れる。
理想は寝る1~2時間前、湯船の温度は38~40度で、10~20分つかること。すぐに寝たいというときには、42度前後のシャワーを高い位置から全身に浴びる。これで同様の効果が得られる。
就寝時間になっても眠くなければ、無理に寝ようとしない
眠くないのに無理に布団にもぐり込んで悶々と過ごしていると、「布団=不眠」のイメージがついてしまい、ますます寝つけなくなる。
20~30分寝つけなかったら布団を出て、音楽を聴く、本を読む、手芸をするなど気持ちが落ち着くことをして、眠くなったら再び布団に入るようにしよう。
午後3時までに20分の昼寝。「パワーナップ」で疲労回復
昼食後と午後2時頃は、満腹ホルモンと体内時計の影響で眠くなりがち。
近年、短時間の昼寝は効率的な疲労回復につながる「パワーナップ」として推奨されている。眠る時間は20分程度(60歳以上は30分以内)。
遅い時間だと夜の睡眠に悪影響を及ぼすため、午後3時までには昼寝を終えるようにする。眠る直前にカフェインをとると、時間差の覚醒効果でスムーズに目覚められる。
「パワーナップ」の効果的なやり方
⚫︎正午から午後3時の間に
⚫︎パワーナップの直前にカフェインをとる
⚫︎椅子にもたれるなど、横にならずに寝る
⚫︎眠くなくても目を閉じる
⚫︎20分程度で目覚める
※60歳以上は熟睡までに時間がかかるため、30分以内が目安
⚫︎目が覚めたらストレッチをする
最適な睡眠時間は人それぞれ。自分の睡眠時間は自分で決める
1日の最適な睡眠時間は人により異なり、年齢や体調、生活習慣、季節によっても変化する。
「よく若い頃の自分と比較して『昔は8時間眠れたのに……』などと言う人がいますが、加齢とともに睡眠時間が短くなるのは当然のこと。今の睡眠時間でも日中元気なら問題ないと考えを切り替えましょう」
「8時間睡眠がいい」はウソ
理想的な睡眠時間のイメージが強い「8時間睡眠」に、科学的根拠はない。自分がすっきり目覚められる時間を基準にしよう。
1日の睡眠時間が6.5~7.4時間の人は、死亡率が最も低いという調査結果も。
ショートスリーパーは特異体質
睡眠時間が6時間未満でも健康に問題のないショートスリーパーの遺伝子をもつ人は2〜3%。それ以外の人に真似はできない。
なかには昼寝などの短時間睡眠を繰り返している「分割睡眠」の人もいる。
寝不足は老化と肥満を増幅させる。しっかり眠ってアンチエイジング
「睡眠の足りない状態が続くと、脳が『体が危機的状況だ』と判断。より多くのカロリーを摂取しようと満腹ホルモンの分泌を減らし、空腹ホルモンの分泌を増やすので必要以上に食べすぎてしまいます」
睡眠不足は成長ホルモンの分泌を抑制してしまい、老化を早める原因にもなる。
朝型でも 夜型でも、自分に合っていれば◎
一般的には、早起きの「朝型」がいいといわれるが、生活スタイルや遺伝によって、朝型か夜型かは異なる。夜型でもつらくなければ無理に朝型に変更する必要はない。
「ただし日々の生活が不規則だと体に負担がかかりやすいので、朝型・夜型にかかわらず、就寝・起床時間を一定にしましょう」
目覚まし時計は不要。「自己覚醒力」を身につければすっきり起きられる
自己覚醒力とは、「この時間に起きる!」と決めた時刻に自然と目覚める力のこと。
睡眠中に脳内でホルモン分泌が増えると、自発的に起床できるようになる。2~3人に1人は自己覚醒力をもつとされ、規則正しい生活の他、年齢が上がり、経験を重ねるほどこの力をもちやすくなる。
自己覚醒法のやり方
コツ① 起きる時間の数字を数えながら、同じ回数だけ枕を叩く
コツ②「明日起きたらどんないいことがあるか」を考える
コツ③「起きられるから大丈夫」と気をラクにして念じる
起きる時間を強く思い描くとともに、コツ❶~❸を行うと成功率が上がる。コツ❶で自己暗示にかかりやすくなり、コツ❷で心地よいイメージができる。コツ❸でプレッシャーから解放され、すっきり目覚めやすくなる。
※この記事は「ゆうゆう」2023年7月号(主婦の友社)の内容をWEB掲載のために再編集しています。
※2023年6月19日に配信した記事を再編集しています。
監修者
医師、医学博士 坪田 聡
つぼた・さとる●雨晴クリニック院長。日本睡眠学会、日本医師会所属。「快眠で健康な生活を送ろう」というコンセプトのもと、睡眠の質を向上させるための指導や普及に努める。2006年に生涯学習開発財団認定コーチの資格を取得し、睡眠コーチングを創始。総合情報サイト「All About」の睡眠ガイドとして情報発信中。