【日本代表】森保監督が国歌斉唱時に〝号泣〟した理由 盟友・武田修宏氏が明かす

国歌斉唱で涙を流した森保監督

涙の理由とは――。日本代表は11日の北中米W杯アジア2次予選シリア戦(Eピース)で5―0と圧勝し、史上初となる全勝と無失点の同時達成による突破を果たした。背番号10のMF堂安律(25=フライブルク)やMF久保建英(23=レアル・ソシエダード)ら攻撃陣が躍動する一方で、注目を集めたのが試合前の国歌斉唱時に〝号泣〟した森保一監督(55)だ。その裏側に隠された思いを、盟友の元日本代表FW武田修宏氏(57=本紙評論家)が明かした。

森保監督はこれまでも国歌斉唱時に気持ちがたかぶって涙ぐむことはあったが、この日は少し様子が違った。あふれんばかりの涙を浮かべ、斉唱が終わると必死にそれを拭う姿があった。

試合後、涙の理由について指揮官は「現役時代を長く過ごした広島で、いろんな経験をさせていただいた。広島にサッカー専用スタジアムができるのは、広島在籍時の大きな夢の一つだった。そういう喜びが出てきて感極まったところはある」と説明。「国歌を歌っている時は日本人である誇りと喜び、幸せがあふれ出てくる。今日、広島でこういう試合ができた二重の喜びで涙が出てきた」と語った。

選手、指導者として長年過ごした広島は森保監督にとって〝第2の故郷〟だけに、念願の新スタジアムでの試合は特別だった。さらに、武田氏は森保監督が抱く熱い思いをこう明かす。

「森保が広島で3連覇した時代に、市内の中心部にスタジアムを建設する計画がなかなか進まなかった。当時、森保と話した時に『まだまだ広島は野球かなあ…』と話していて、いろいろな思いがあったのだと思う。結局解任されて広島の監督としてスタジアムに立つことはなかったが、日本代表監督になって新スタジアムで指揮を執ることになった。森保は建設のために尽力したし、その努力が報われたということもあったのだろう」。悲願の裏に隠された苦労が、異例の〝号泣劇〟につながったというわけだ。

記念すべき一戦は最高の内容で完勝。特に際立ったのが堂安だ。代表で初めて右ウイングバックで先発し、前半19分にチーム2点目のゴールを奪うなど躍動。武田氏は「守備も責任を持ってやっているし、森保もそういうところを買っている。年齢的にも一番いい時だし、これからさらに楽しみだ」と高く評価した。

そして、同じ右サイドに配された久保との〝新ホットライン〟も「うまくかみ合っている」と武田氏は太鼓判。FW上田綺世(25=フェイエノールト)と合わせた3人を「プレーの質の高さを見せた」と絶賛した。

この日の前半にベストメンバーで見せた3―4―2―1の新システムは「アジアカップで負けたことによって今後を考える中で、最終予選でも大きな武器になる」とその成熟に期待を寄せた。

指揮官思い出の地で、森保ジャパンの充実ぶりを披露する一戦となった。

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