「あの人に比べて私はみじめで不幸」他人と比べて心が苦しくなる人へ…シニアが気持ちよく生きるための“心の持ちよう”【精神科の名医が助言】

(※写真はイメージです/PIXTA)

年を重ねて精神が落ち着いたという人もいれば、他人への羨望や嫉妬心を止められず、むしろ若いときよりもやっかみがひどくなっている…そんな人もいるかもしれません。そんなときの解決方法のカギは「それまで頑張って生きてきた自分を受け入れること」だといいます。今回はシニア世代の名医・保坂隆氏の著書『お金をかけず気軽にできる 「ひとり老後」が楽しい77の習慣』(KADOKAWA)から、他人と比較して疲れてしまうシニアへの助言をご紹介します。

他人は他人、自分は自分…「幸せくらべ」で疲れない

「隣の芝生は青く見える」とはよく言ったもので、誰にでも羨望や嫉妬心があります。若い頃は、そうした気持ちが「自分を高めよう」「もっと頑張ろう」とヤル気になっていたかもしれません。

ところが、年を重ねるとともに、成功した人を見れば「あの人はいいなぁ。きっと運がいいんだろうなぁ」と思ったり、容姿端麗の人がいれば「おそらく中身はないのに、見た目だけで生きてきたんだろう」などと、やっかんでしまったりすることも。

しかし、人生を締めくくる時期を迎えたら、他人とくらべることにはまったく意味がないと悟ってください。逆に「他人の不幸は蜜の味」という考えからも、距離を置きたいものです。

スリランカの仏教家・アルボムッレ・スマナサーラはこう話しています。「人の幸せを自分とくらべる。自分の不幸を人とくらべる。過去の幸せと今をくらべる。将来の幸せと今をくらべる。理想の幸せと現実をくらべる……すると不幸な気持ちになってしまうことが多いのである」

「他人は他人、自分は自分」です。あなたも自分なりに精いっぱい、頑張って、今日まで生きてきたのです。そんな自分を、自分なりに受け入れ、認めていれば、他人の成功や幸せを気持ちよく認められるはずで、「自分はみじめだ、不幸だ」など考えることはないでしょう。

生きてるだけで丸もうけ…ごく普通の生活をしていれば十分

年を重ねると、「この先、何を生きがいにすればいいのだろう」という思いは誰もが感じることです。そして、「生きがいを持たなければ!」とか、「もっと楽しまなければいけない」と、自分を追い詰めてしまう人もいるのです。

あなたは「生きがい」や「楽しい人生」という言葉にどんなイメージを抱くでしょう。たくさんの人に期待されて活躍する自分なのか、それとも旅行や趣味を存分に楽しむ優雅な自分なのか、あるいは、孫や子どもに囲まれた団らんの時間でしょうか?

私は「生きがい」や「楽しい人生」というのは、もっと身近ですぐ手の届くところにあるものだと考えています。なぜなら、誰もが簡単に手に入れられないものなら、世の中、不幸な人だらけになってしまうからです。

「毎日がマンネリだ」「生活が楽ではない」と文句を言いながらも、それなりに平穏な生活を送っている人はたくさんいますね。その日の食べ物や住むところにも事欠いている人というのは、ほとんどいないでしょう。

生きがいとは、生きるに値するもの。生きていく張り合いや喜びといった意味の言葉です。生きるのがつらくてたまらないとか、早く死んでしまいたいといった思いを日々抱えている人は別として、ごく普通に生活している人は、十分に「生きがい」を持って生活しているのではないでしょうか。

ところが、メディアから「生きがい」という言葉がやたらに発信されるので、無意識に、「もっと生きがいを持たなければいけない」「もっと人生は楽しめるんじゃないのか」と、あせってしまうわけです。

人間にとって基本的に必要なのは「衣食住」。「食う寝るところに住むところ」があれば、それほど心配などいりません。

保坂 隆

保坂サイコオンコロジー・クリニック院長

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