『ふてほど』PがTBS退社、No.1脚本家は5年契約10億円超「シナリオ至上主義」Netflixと地上波の絶望的な差

※画像は磯山晶プロデューサーが携わっていたTBSドラマ『不適切にもほどがある!』の公式インスタグラム『@futeki_tbs』より

6月10日、TBSの磯山晶プロデューサー(56)が同局を退社することが報じられた。

「すでに退社する話は出ていましたが、詳細を報じた『スポーツニッポン』によれば磯山氏は2019年から出向していたTBSグループの映像制作会社『TBSスパークル』から、6月1日付でTBSの「人事労政局預かり」へ異動となり、現在有給休暇を消化中とのこと。退所後はフリーのプロデューサーとして、Netflixで新作を手掛けるといいます。

磯山氏は今年1月クール放送の宮藤官九郎氏(53)脚本、阿部サダヲさん(54)主演の超話題作『不適切にもほどがある!』を筆頭に多くのヒット作を生み出してきたTBSの敏腕ドラマプロデューサー。『不適切~』もそうですが、宮藤氏こと“クドカン”とは名コンビで知られていて、ネトフリ作品でも松坂桃李さん(35)主演の『離婚しようよ』(23年配信)で実績がある。報道にあった磯山氏のネトフリ新作も、クドカン脚本になるのではともっぱらです」(ワイドショー関係者)

磯山氏のように、優秀なキー局のプロデューサーが独立したり、ネトフリに移籍する話は増えている。日本テレビでは、松岡茉優(29)主演の『最高の教師 1年後、私は生徒に■された』(23年9月期)のプロデューサーでドラマ部門の若手エースだったF氏がネトフリへ移籍している。

「潤沢な資本を誇る動画配信メディアの作品がクオリティや話題性でも地上波テレビ局の作品を上回るようになりつつある昨今ですが、その最たる例がネトフリですよね。世界で約2億7000万人もいるとされるネトフリの会員数。そこから生まれる資金力は圧倒的です。世界で観られる作品ができればすぐに制作費は回収できますから、同メディアのドラマにかけられるおカネが地上波テレビの比ではないのは当然ですよね。

そんなネトフリがヒット作を連発している理由の1つが“シナリオ至上主義”だと言われていて、最近では脚本家の坂元裕二氏(57)の“5年契約”が話題になったのも記憶に新しいですね」(前同)

坂元氏は、知らない人はいないであろう名作『東京ラブストーリー』(91年/フジテレビ系)、松雪泰子(51)主演の『Mother』(10年4月/日テレ系)、永山瑛太(41)が主演し、尾野真千子(42)、真木よう子(41)、綾野剛(42)が2組の夫婦を演じた『最高の離婚』(13年1月/フジテレビ系)、松たか子(46)主演の『カルテット』(17年1月/TBS系)などなど数多くの大ヒット作品の脚本を手掛けたことで知られる名脚本家。

世界的な評価も高く、23年6月公開の脚本担当映画『怪物』はカンヌ国際映画祭で日本映画では史上2度目となる脚本賞を受賞している。

そんな坂元氏に対してネトフリの日本法人『Netflix合同会社』は、23年6月に「5年契約」の締結を発表。同年11月には吉沢亮(30)と宮崎あおい(28)のダブル主演映画『クレイジークルーズ』が、坂元氏の“ネトフリ第1弾作品”として配信された。

■4月クール唯一好成績を残しているTBSドラマ

制作会社関係者は話す。

「ネトフリは坂元氏と契約するにあたり、10億円どころでは済まない超高額な契約金を支払ったといいます。主演俳優などではなく脚本家に、テレビ界では想像もつかない、まるでメジャーリーガーのような莫大な契約金――ネトフリはそれだけ脚本に重きを置いているということですよね。そこに一流の演出と俳優の演技が入る。だからこそ多くの人々を惹きつけてやまないような作品が誕生すると。

そのようにしてネトフリの勢いが増し続けている一方で、地上波ドラマは年々勢いが低下しつつありますよね……」

テレビ不況で年々、予算が減少していっていることに加えて、磯山氏の独立のように、局を辞める人も増えている状況にあるが、

「最近は地上波ドラマの明るい話が少なく、それこそ磯山さんが手がけた『ふてほど』のヒットくらいではないでしょうか。そして、ここにきて日本テレビのドラマが過去最大級の危機を迎えている状況にありますよね。

日テレでは、木南晴夏さんが(38)主演した『セクシー田中さん』(23年10月期)の原作者・芦原妃名子さんが、望まぬ原作改変が原因でトラブルとなり、今年1月に逝去。5月31日、日テレから91ページの調査結果報告書が出ましたが、その内容に識者始め多くの人から厳しい意見が殺到してしまい、騒動が収束する気配はありません」(前同)

また、6月9日に最終回を迎えた間宮祥太朗(31)主演の『ACMA:GAME アクマゲーム』は企画に2年を費やした“日テレの大型プロジェクト”だったが、原作・メーブ氏と作画・恵広史氏による同名漫画(講談社)と設定が大きく変わり、そのうえでシナリオのクオリティも低かったことから辛らつな意見が多数寄せられ、今、テレビ界が最重要視している13~49歳のコア視聴率が1%台を連発する惨敗に終わってしまった。

ドラマと連動した『劇場版ACMA:GAME最後の鍵』(10月25日公開予定)が控えているが、不安視する声も多い。

「『アクマゲーム』は日テレ局内でも評価は極めて低かったといいます。局員でも第1話で見るのを辞めた人が多くいたそうです。

クオリティの厳しさが言われているのは、日テレだけではありません。4月期ドラマで言えば広瀬アリスさん(29)主演で、天下の『月9』枠の『366日』(フジテレビ系)とか、テレビ朝日開局65周年記念作で木村拓哉さん(51)主演の『Believeー君にかける橋ー』などにも脚本面で多くの厳しい声が上がっています。

現在はネトフリを始め、いくつもの配信があり、月会費さえ払えばいつでもどこでも世界中の名作ドラマが見られる。ドラマ好きは、地上波の微妙な作品を我慢して見る必要がなくなりました。だから、いくらスター俳優、人気タレントが出演しても作品がつまらなければ見てもらえない。そして今、作品に対する批判意見も演技以上に“シナリオがつまらない”という声が目立ちます。

地上波ドラマが予算でネトフリに勝てないのは当然ですが、地上波ドラマはいまだにキャスティングありきで作っていると感じさせる作品も多い。一流脚本家に数十億円のギャラを出すネトフリとの差は、今後ますます開いていってしまうかもしれませんね……」(前同)

4月期ドラマで唯一、高いコア視聴率を維持し続けている作品は長谷川博己(47)主演の『アンチヒーロー』(TBS系)だが、本作が4人の脚本家がち密な話し合いを重ねて物語をつくり上げるハリウッド方式を採用していることからも、脚本の重要性は明らかだ。

脚本の出来が数字に直結する時代に突入したドラマ業界。地上波テレビは、どう追いつくのか――。

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