「恭司、集中しろ!」“誘惑”を断ち切って掴んだ3-0判定勝利! 二度目のUFC参戦を見据える堀口恭司、リベンジマッチの舞台裏【RIZIN】

やはり、堀口恭司は強かった。

6月9日に開催された『RIZIN.47』(国立代々木競技場第一体育館)。そのメインイベントで、堀口はセルジオ・ペティスと対戦した。ペティスはアメリカの団体ベラトールでバンタム級チャンピオンだった強豪。堀口にとってはリベンジマッチだった。

初対戦は2021年の12月、舞台はベラトール。ペティスのタイトルに挑戦した堀口は優勢に試合を進める。ストライカーのペティスに対してテイクダウン。最後まで同じペースで相手を“漬け”ていけば堀口の勝利は確実に思える内容だった。

ところが、4ラウンドに“まさか”の一発が待っていた。ペティスの右ハイキックをダッキングでよけた堀口。そこへ蹴りの回転のままバックブローが飛んできた。不意を突かれ堀口は失神。KO負けを喫してしまう。グラウンドに徹しきれず、スタンドに戻ったことが敗北につながってしまった。

“このままでは試合が盛り上がらない”という気持ちが堀口にはあった。実は今回のリマッチでもそうだったという。だが、堀口はその思いを抑え込んだ。

大会では、日本勢が外国人選手に負ける試合が続いた。嫌でも“世界の壁”を痛感させられる。だが堀口は違う。堀口自身が“世界”のファイターなのだ。

1ラウンド、2ラウンドとテイクダウンに成功した堀口。前回同様、トータルな実力で上回っているように見えた。あとはどう試合を終わらせるか。

グラウンドでは、ペティスがディフェンシブだったため思うように攻めることができなかった。動きが出たのは、ペティスがオモプラータを狙った場面などわずかだった。

「(ペティスは)守りに徹してきましたね。あれをやられちゃうと(フィニッシュは)難しい。パスガードも狙ったんですけど戻して抱きついてきて。だからコツコツとパウンドを当てるという感じになりました」

試合をしながら、会場が「シーンとしてた」と感じたそうだ。ではどうするか。3ラウンドに堀口が選んだのはスタンドの闘いだった。
バックスピンキックなど鋭い蹴りを放ってくるペティス。それをかわしながら堀口はパンチを当てていく。フィニッシュしたい、会場を盛り上げたいという気持ちは強かった。だが、堀口は試合をこう振り返った。

「悪い癖が出て、打ち合おうとしてしまいましたね」

セコンドから「恭司、集中しろ!」という声が飛ぶ。堀口はその言葉通り、落ち着いて試合を進めた。
「前回のミスがあったので、セコンドの指示を聞いて勝ちに徹しようと」

強引な深追いはせず、試合を“軟着陸”させたと言えばいいだろうか。判定3-0、堀口のリベンジ達成だ。

インタビュースペースでの堀口は「決めて(KO、一本で)勝ちたかった」と語っている。もっと盛り上げたかったということだ。二度目のUFC参戦を狙っているだけに、RIZIN出場はこれが最後になるかもしれない。であれば、なおさら本領発揮のフィニッシュで“有終の美”を飾りたいところだった。

ただそこで、勝利の可能性を下げることはしないのが堀口だ。

「なにしろ、勝てたことが嬉しかったですね」
「リベンジマッチだったので、勝つ姿を見せるのが一番の目標でした。それは見せることができた」

序盤から優勢だったからこそ、KOしたくなる。観客を沸かせ、歓声を浴びたい。しかし堀口は、そんな誘惑を断ち切った。格闘技において最大の目標は勝つことであり、リマッチならなおさらだ。

この日、堀口が見せた強さは勝負に徹する強さ。勝利以外のものに気を取られない強さだった。

それだけ強い堀口だから、我々の溜飲を下げる豪快な勝利も、いずれまた見ることができるだろう。

取材・文●橋本宗洋

© 日本スポーツ企画出版社