実刑判決不服、高裁審理へ 那須雪崩事故で教諭ら3人控訴 遺族は再び公判出廷の見通し

那須雪崩事故と裁判を巡る主な経緯

 栃木県那須町で2017年3月、登山講習会中だった大田原高山岳部の生徒7人と教諭1人が死亡した雪崩事故で、業務上過失致死傷罪に問われた男性教諭ら3人が12日、いずれも禁錮2年(求刑禁錮4年)の実刑を言い渡した宇都宮地裁判決を不服として東京高裁に控訴した。雪崩発生の予見可能性や過失の有無など、事故の刑事責任を巡る審理の場は高裁へと移る。

 控訴したのは、当時の県高校体育連盟(県高体連)の登山専門部委員長で講習会の責任者だった猪瀬修一(いのせしゅういち)(57)、副委員長で死亡した8人がいた1班の引率者だった菅又久雄(すがまたひさお)(55)、2班を引率していた渡辺浩典(わたなべひろのり)(61)の3被告。

 雪崩を予見できたかや訓練範囲の明確な設定などが公判の主な争点だった。

 5月30日の地裁判決は、3被告の過失や雪崩発生の予見可能性を認定。現場周辺に少なくとも30センチの新雪が確認され、上部斜面では客観的に雪崩発生の危険性が存在していたと説明した。「雪崩という自然現象の特質を踏まえても、相当に重い不注意による人災」「部活動の死傷事故としては類をみない大惨事」などと言及し、実刑を言い渡した。

 被告側は「雪崩は予見できなかった」として、初公判から一貫して無罪を主張した。当時の積雪は15センチ程度で大量と認識しておらず、訓練範囲を明確に定めて生徒や講師に説明したと訴えたが、地裁判決は退けた。

 判決によると、17年3月27日朝、3被告は前夜からの積雪を踏まえ、講習内容を深雪歩行訓練に変更。新雪が積もった急斜面で雪崩の発生を予想できたのに安全区域の設定や的確な周知をせず、雪崩に巻き込まれた8人を死亡させ、5人にけがを負わせた。引率の菅又、渡辺両被告は危険回避の明確な指示や安全確保の措置も怠った。

 猪瀬被告は12日、下野新聞社の取材に対し、「何も話すことはありません」と語った。被告側の弁護士は取材に応じていない。

 一方、遺族側代理人の石田弘太郎(いしだこうたろう)弁護士によると、控訴審でも一審と同様に6遺族が被害者参加制度を利用し、公判に出廷する見通し。

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