今年の「Interop Tokyo」は放送局やメディア業界必見。複数の放送局間の相互接続を実施する特別企画などに注目[Point of View]

ネットワークテクノロジーの一大イベント「Interop Tokyo 2024」(以下、Interop)が2024年6月12日から14日にかけて千葉県・幕張メッセで開催する。

今年のInteropでも、1994年の第一回開催以来から行われている毎年恒例の会場内にネットワークを構築するプロジェクト「ShowNet」を行う。出展社から提供された約2000の製品・サービスと、約700名ものトップエンジニア達が幕張メッセに集結して構築されるネットワークで、次世代のコンセプトネットワークを作り出す技術者集団「ShowNet NOC(Network Operation Center)チーム」らが中心となって設計から構築、運用まで実施する。そのNOCメンバーの遠峰隆史氏と渡邊貴之氏に、2024年ShowNetの見どころを聞くことができたので紹介しよう。

Interop 2024会場マップ。オレンジ色がShowNetの展示エリアだ※画像をクリックして拡大

800Gの最新製品や惑星間インターネット、Media over IP特別企画に注目

――2024年のShowNetに、新トレンドや技術的な変化がありましたら教えてください。

遠峰氏:

ShowNetはインターネットサービスプロバイダー(ISP)のネットワークを模した形で、各種の相互接続実証やチャレンジを実施する巨大プロジェクトです。ShowNetのネットワークにはさまざまな技術要素を入れています。例えば、バックボーンの面では、これまでは400Gが主流でした。

渡邊氏:

今年は800Gにチャレンジと新しい試みを行っています。去年のバックボーンは400Gでしたが、今年初頭から800Gがスタンダード化されました。2023年からじわじわと流れは来ていたのですが、2024年にスタンダードとして認定され、各メーカーさんは800Gソリューションをリリースしてきています。800Gへの取り組みは今年が初めてとなります。
また、2023年から始まった特別企画「Internet x Space Summit」の取り組みの中では、ShowNetの中でも衛星通信回線を引き込んで実現します。これは今年が初めてです。

遠峰氏:

Internet x Space Summitの方では、惑星間通信の技術展示もあります。ShowNetでも、実際に取り入れてデモンストレーションを行います。
また、Media Over IPの取り組みは今年3年目になります。今まではShowNetの中だけで映像のIP伝送のデモンストレーションを行っていましたが、今年は特別企画という形で、放送局さんにもご協力いただきます。
放送局さんのエンジニアの方が映像伝送を使った制作のトライアルやインターネット越しに映像をやり取りしながら、お互いに素材の融通、出来上がった素材の共有を行う予定です。

遠峰隆史氏(左)と渡邊貴之氏(右)

――今年のShowNetは昨年以上にスケールアップしてそうな感じですね。今年のキャッチコピーについては、何か決まっていますか?

遠峰氏:

今年のキャッチコピーは「Inter * Network」というテーマです。「*」(アスタリスク)には何でも入れられる、それぞれを相互間に接続できるネットワークという意味として考えました。
というのも、さまざまなものがネットワークつながり、間を取り持つネットワークという重要性が高まってきています。たとえネットワークの用途や目的や課題が違ったとしても、それぞれに最適なネットワークでつなげることができる。そういった既存の営みの中で使われてきた要素を、ネットワークを使って繋ぐことによって世界を広げることができます。
企業内活動の置き換えとしてネットワークが使われていたり、宇宙もインターネット技術を使ったネットワークでつないでいける。コロナ禍でリモートワークが始まっていく中で、皆さん体感されている部分だと思います。

ShowNetと放送局が共創

――PRONEWS的には放送局とのコラボレーションは、大変興味深いと思いました。

遠峰氏:

今年、ご協力いただいたのは、NHKさん、日本テレビさん、テレビ朝日さん、テレビ北海道さんの4局です。機材のご提供や実際に放送局さんのIPで組まれた制作のシステムをインターネット越しにつながせていただいて、映像のやり取りやそれぞれの局で作った画をクラウドにあげて、ShowNetのデモ環境で見るといったことをやらせていただきます。
放送局さんご協力いただいて、ShowNetと共創というのは今回初めての試みです。さらに複数局さんが一緒の現場でやられるというのも初めてです。

――放送システムのIP化は放送局さんにとっても注目のトレンドですね。

遠峰氏:

放送局の制作の皆さんもMedia Over IPの技術に大変ご興味を持っていただいています。広がりを見せつつ、実際に制作現場に取り入れる中で、試して検証しないと採用できない部分もあると思います。ShowNetの場を使って試していただくことで、「SDIベースの映像制作環境からIPベースに乗り換えてもよさそうだ」と感じていただけることが大きなポイントだと思います。

ローカル5Gのツアーを実施

――ツアーを毎年やられていますが、今年はどのような試みを予定していますか?

渡邊氏:

ツアーとしては、今年はローカル5G、プライベート5Gの端末を持っていただいて、体感していただく取り組みを新たに実施します。今まではインカムつけていただいて、普通に実機を目で見て、触れていただく形でした。今年は、ツアーの一部でツアーにご参加いただいた方で、リクエストベースでお受けした方には体験できるという取り組みを予定しております。

IPやインターネットの技術を使ったネットワークは実用域であることを見て感じてほしい

――最後にお二人から、今年のShowNetの注目ポイントを改めてご紹介をお願いします。

遠峰氏:

ShowNetは前提として、2年後、3年後、5年後、10年後に来るネットワークを使った未来というのを、今ある最新の技術を使って実現し、来場者の方にも体感いただけるのをコンセプトとしています。
先ほどご紹介した5Gを使ったツアーでご体感いただいたり、業務の現場にネットワークがなかった皆さんにも使っていただき、それを使うことでどのように変化するのかを見ていただいて、「ネットワークは使える」と感じて帰っていただきたいと思っています。
課題もあると思いますが、ぜひIPやインターネット技術を使ったネットワークは実用域であることを見て感じて帰っていただけるといいかなと思います。

渡邊氏:

ShowNetは12の分科会があり、全ての分科会に対して10年後までも未来を見据えた取り組みを行っています。その中でテーマが「Inter * Network」という形で、ネットワークはインフラ化していて、中に何が来ても対応できる状態を作り上げ、その様子を見ていただけるようにデモンストレーションを行っています。
実際に会場に来ていただいて、最先端の取り組みをぜひ体験していただきたいと思っています。

遠峰氏:

恐らくShowNetをご覧いただくことで、自分の身近な「Inter * Network」を感じていただけると思います。

――ありがとうございました。

© 株式会社プロニュース