「また会おう」マドリー加入間近の神童エンドリッキがホーム最終戦で涙。「これまでの人生で起きたことが頭をよぎり…」【現地発】

7月のレアル・マドリー加入が決まっているパルメイラスの神童エンドリッキ(17歳)が5月30日、コパ・リベルタドーレスのサンロレンソ(アルゼンチン)戦で国内最後の試合に臨んだ。

4万人の観衆で埋まったホームスタジアム。自身の巨大な写真をあしらった垂れ幕と「また会おう」のメッセージを目にした少年は、大粒の涙を流した。

「多くの困難に直面してきたけれど、家族とパルメイラス関係者の渾身のサポートのお陰でここまで来られた。感謝の言葉しかない」

首都ブラジリア郊外の出身。自身もプロ選手を目指したが叶わず露店商をしていた父親が、小柄ながら頑強な身体を持ち、柔らかいテクニック、敏捷さ、創造性、豪胆さを備える息子に夢を託した。

地元のアマチュアチームで得点した動画をインターネットに投稿し、南部のビッグクラブのアカデミー入りのチャンスをうかがった。当時の一家は貧しく、エンドリッキが夜中に起きて空腹を訴えると、母親から「寝なさい。空腹を忘れられるから」と諭された。

10歳の時に名門パルメイラスのアカデミーのテストを受けて合格。父親はクラブに練習場の掃除夫の仕事をあてがってもらい、一家でサンパウロへ移り住んだ。順調にアカデミーの階段を昇り、2022年、16歳で待望のプロ契約を結んだ。

トップチームでも徐々に出場機会を増やすと、11月にはレギュラーに定着する。そして22年末、18歳になる24年7月からの入団で交渉がまとまり、R・マドリーと契約。移籍金はボーナス込みで最大6000万ユーロ(約93億円)と言われている。

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23年11月に念願のデビューを果たしたセレソンでは、今年3月の欧州遠征でイングランド、スペイン相手に連続得点。スペイン戦ではサンティアゴ・ベルナベウで、R・マドリー加入前にセレソンの一員としてゴールを決めた。6月20日に開幕するコパ・アメリカのメンバーにもエントリーされている。

サンロレンソ戦で流した涙について、「これまでの人生で起きたことが頭をよぎり、感傷的になったんだ」と説明したエンドリッキのキャリアは、ブラジルの子供たちの夢をそっくりそのまま実現したものだ。私生活ではガールフレンドとの熱愛ぶりが報じられるなど、すべてが完璧に見える。

ただし、R・マドリーでは世界トップの名手たちとの過酷なポジション争いが待ち受ける。また、過去には誰もが羨むような経歴を積みながら、結果として大成できなかったケースがいくつもある。

鳴り物入りで「白い巨人」に加わるこの若者の今後を、世界中のメディアとファンが注視している。

文●沢田啓明

【著者プロフィール】
1986年にブラジル・サンパウロへ移り住み、以後、ブラジルと南米のフットボールを追い続けている。日本のフットボール専門誌、スポーツ紙、一般紙、ウェブサイトなどに寄稿しており、著書に『マラカナンの悲劇』、『情熱のブラジルサッカー』などがある。1955年、山口県出身。

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