消えぬ衝動に震え...ギャンブル依存症 自力での解決は困難

スマートフォンを入り口に、ギャンブル依存症になる人も増えている (写真はイメージ)

 「自分の力でギャンブルをやめるのは難しい。支えてくれる人に出会い、その仲間と一緒に解決策を見つけていくことが大切だ」。郡山市で5月に開かれたギャンブル依存症家族のための勉強会。本県出身の20代男性は「ギャンブル依存症」の当事者として思いを吐露した。

 男性は大学時代、友人に誘われて先物取引にはまり「暇つぶし」として違法なオンラインカジノに手を出した。勝ち額3千万円を1日で失ったこともある。「1万円だけ増やしてやめよう」と思うものの、結局は賭け続け、気付けばやめられなくなっていた。

 常に賭けていないと落ち着かない自身の異常さに気付き、近所の自助グループへ。週1回、グループの活動に参加するようになったが、ギャンブルへの衝動は消えず、動悸(どうき)や震えが止まらなくなっていた。

 「これは明らかに病気だ。二度とこんな思いをしたくない」―。男性はギャンブル依存症の当事者や家族への支援活動を行う「ギャンブル依存症問題を考える会」に電話で助けを求め、ギャンブルを断ち切るため自分と向き合うことを決意した。

 当事者が集まるミーティングや、その後の意見交換の場に頻繁に通うようになり、回復プログラムにも取り組んだ。同じ立場の仲間と悩みを分かち合うことで次第にギャンブルへの衝動は消え「この人たちと回復していきたい」と仲間意識が芽生えるようになった。

 ギャンブルから脱して約1年。男性は「(当事者や家族が『このままでは駄目だ』という心情になる)底付き体験をした時に相談できる場所があり、相談できる人とつながることが大切」と話した。

 考える会の田中紀子代表(59)によると、ギャンブル依存症は「世界保健機関(WHO)が認めた精神疾患という病気」という。米大リーグ、ドジャースの大谷翔平選手の元通訳水原一平被告がそうだったように「借金を続けたり、うそをついてお金の無心を繰り返したりする」(田中代表)のが依存症患者の特徴だ。

 当事者の行動に悩む家族を見てきた田中代表は「周囲がすぐに借金を肩代わりしてはいけない」と指摘した上で、当事者が依存症に向き合うポイントをこう語る。「自分で借金を返せなくなり、苦しい状況になってから、ギャンブルの制限ができていないことに気付く。ギャンブル依存症は認めてから、初めて治療に向き合える病だ。

 「スマホが入り口」増加

 身近なスマートフォンを入り口にギャンブル依存症となる人も増えている。考える会によると、昨年寄せられた相談のうち、違法なオンラインカジノ関連の相談は全体の約20%を占め、前年比で約7ポイント増加した。

 田中代表は「新型コロナウイルス禍以降、スマホでできるオンラインカジノなどが増えた。危険性や違法性を知らずに始め、依存症になる人も少なくない」と語る。動画投稿サイト「ユーチューブ」の人気配信者が紹介していることで若者世代を中心に始める人が多いという。田中代表は「オンラインギャンブルを始めてから半年で依存症になるケースも珍しくない」と指摘、「早急に規制しなければいけない」と警鐘を鳴らす。

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