「どうして分かってくれないの?」女子ゴルファーによる女子ゴルファーのためのクラブお悩み体験記

レディスクラブの進化で女性ゴルファーの選択肢も増えつつある(撮影/服部謙二郎)

近年、コースや練習場でゴルフを楽しむ女性を見かけることが多くなった。クラブメーカー各社もレディスモデルに注力し、女性専用設計やデザインを凝らしたクラブなどを用意している。とはいえ大前提として、男性向けに比べるとモデル数は少なく、シャフトの選択肢も少ない。そのためか、練習を重ねて上達すると、女子プロにならってメンズモデルを手にする女性が多いと聞く。

かくいう筆者も女性ゴルファーで、かれこれ8年ほどメンズクラブを愛用している。ただし男性用も、身長に対してクラブが長すぎて構えづらかったり、ヘッドが重すぎて振りづらかったりという弊害もある。いったい私たち女性ゴルファーのクラブの悩みはいつになったら解決するのか。そんな折、「女性の悩みにコミットしたクラブが登場した」というウワサを聞きつけた。その試打体験をレポートしたい。(取材・構成/大久保彩)

話題の「ザラザラミーリング」が試せると聞いてワクワク!

ヘッド違い、シャフト違いで新しいドライバーをテスト(写真は筆者)

今回試打をしたのはブリヂストンゴルフのレディスモデル「B-LD(ビーレディ)」シリーズ(4月5日に発売)。レディスモデルとしては2022年以来の2代目で、ドライバーにはメンズモデル「B」シリーズで話題の「スリップレスバイトミーリング」を採用しているとのこと。「このザラザラのフェース面、プロの評判を聞いていたから打ってみたいと思っていたんだよね」と一人にやける。

さらにうれしいのは、「B-LD ドライバー」のほかに、「B3 MAX」や「B3 MAX D」も用意されており、メンズモデルとも打ち比べることができること。各モデルのミーリングを比較して分かったのが、メンズとレディスでミーリングの意匠に違いがあった。メンズはタイヤをイメージした模様で黒っぽい色味になっているが、レディスはシルバーの色味で菱形が並んだデザインになっていた。メンズは武骨、レディスは可憐な雰囲気、性能に差は無いのだろうか。

フェース面での滑りを抑制する「スリップレスバイトミーリング」。レディス限定デザインが施されている(撮影/大久保彩)

試打当日はあいにくの雨模様で、ラウンドには不向きだったが、"ミーリング日和”ではあった。「B-LD」はミーリング加工のおかげか、小雨の中でもインパクトがぼやけず打感はハッキリ。ホール数を重ねても水滴で滑ることはなかった。同時に「B3 MAX」も打ってみたが、素人の私にはフェース面の性能に差は感じられなかった。後ほどブリヂストンの担当者に聞くと、「クロスハッチング状ミーリング加工に効果があり、デザインによる性能への影響は一切ない」との回答。見た目だけの違いならカワイイほうがいいか。

雨の日は飛距離が落ちて打数も増えてしまうため、テンションも後半になるに連れて下がっていくというのが通例。が、今作ドライバーでは雨による飛距離ロスは少なく、弾道が安定していたため気持ちよくラウンドができた。

レディスモデル選択への壁、それは軽すぎる純正シャフト

今回私が気になったのは、ミーリングもそうだが、シャフトのラインアップ。これまでレディスモデルの使用をためらっていた大きな理由が、純正シャフトにあるからだ。何せ選択肢が少なく、ハマるものに出合えないケースが多い。特に軽いものが多く、ある程度振れるようになってくると、レディスモデルの純正だと物足りなくなってくるのだった。

私の現在のエースドライバーは、今では名器とも呼ばれる初代「M2」のメンズモデル(ロフト12度設定)。8年前に新品で購入して以来、長年苦楽を共にしてきた(苦の方が多い)。シャフトは大学時代に先輩から譲り受けた「M4 ドライバー」の純正シャフト「FUBUKI TM5」のフレックスR(約50g)。「軽いよりはいいかな」と、自分に最適かは分からず使い続けている。

今回の「B-LD」シリーズは、2種類の選択肢があった。一つは、藤倉コンポジットと共同開発した「スピーダー NX BS40LDw」。硬さはL(38g)とA(41g)で中調子。もう一つは、三菱ケミカルと共同開発した特注専用「ディアマナ BS50LD II」。硬さはAのみで重さは50gと少し重め。さらに中元調子なので、しっかり振れそうなモデルだ。早速、スピーダーとディアマナそれぞれのAフレックスを打ち比べてみた。

純正シャフトの「スピーダー NX BS40LDw」(写真上)と特注専用の「ディアマナ BS50LD II」(撮影/大久保彩)

練習場に場所を移して、球を打ちながらヘッドとシャフトのマッチングを探っていった。こんな機会は初めてなのでワクワク。

はじめに「B-LD」を試打。純正の「スピーダー」(A)で打ったところ、軽すぎたのかインパクトがバラバラ。時にテンプラも出てしまった。続いて「ディアマナ」(A)。振っていてしっかり感があり、こちらはタイミングが合っていた。普段よりも高弾道でミスヒットでも曲がりにくい印象。平均飛距離が出ていたので驚いた。

さらに「B3 MAX」と「B3 MAX D」を試打。どちらも純正シャフト「VANQUISH BS40 for MAX」の硬さSR(約46g)を試したが、残念ながらどちらもクラブに引っ張られて気持ちよく振り切ることはできなかった。「ディアマナ」装着のレディスモデルと比べてもクラブ全体が約14g重く、シャフトも約1.25インチ長くなったことで、"振り重く”感じられて、タイミングが合わず球が散ってしまったようだ。

今回私がハマったのは、「B-LD」に「ディアマナ」を装着した組み合わせ。レディスモデルでも自分に合うスペックがあると分かって、満足感の高い試打体験だった。

グリップはゴルフプライドと共同開発した軽量のオリジナルモデル(撮影/大久保彩)

「B-LDドライバー」は、細部へのこだわりも秀逸。クラブ重量を軽くするために(約250~270g)、ゴルフプライドと共同開発してグリップの軽さにこだわった。さらにその軽量グリップはバックライン入りで、スクエアを感じやすくしている。また、男性向けモデルはカーボンクラウンだが、女性向けはチタン製。打感と音にこだわり、女性が好みそうな高音で伸びのある打球音を実現しているという。

女性開発者が語るレディスモデルへのこだわりの数々

いろいろと驚きの多い一日だったが、今作のレディスモデルの開発者が女性と聞いてさらにびっくり。開発担当の和田梢(わだこずえ)さんは、大学院でゴルフクラブに関する研究を行い、同社に入社。2012年ごろからメンズとレディスクラブの設計を担当。2015年に発売された「J615 CL」シリーズから、同社の全レディスモデルの設計や企画開発に携わってきたという。ゴルフ業界では珍しい女性開発者にクラブ作りのこだわりを聞いてみた。

ブリヂストンスポーツでクラブ開発を担当する和田さん。試打会当日は参加者に製品説明を行った(撮影/大久保彩)

「私自身も大学時代からゴルフを楽しむ、イチゴルファーでした。お客様の悩みに心底共感できるからこそ、より良い解決策を提示できると思っています」と前置きしたうえで、今回の「B-LD」の狙いを話した。「性能面は自分の経験だけでなく、弊社のゴルフスクールに通う女性のお客様や、教える側のインストラクターから直接ヒアリングしています。レディスモデルはシャフトの種類を選べないものが多く、自分に合ったシャフトを選んでみたいという要望をよく耳にしていました」と女性ゴルファーならではの悩みに着目。「重めで軟らかいシャフトがあったらいいな」という思いから、特注シャフト「ディアマナ BS50LD II」の企画開発をスタートさせた。

さらにデザイン面では、レディスモデル限定のカラーカスタムにも注力。「弊社の過去のモデルや初心者セットと組み合わせて使っても違和感のないようにレッド・ブルー・ピンクの3色を用意しています。キャディバッグの中を同じ色で揃えたい、持っているウェアやキャディバッグに似合う色味のクラブが欲しいなど、女性ならではのニーズに応えるため、無料でカラーを選ぶことができるようにしました」。ヘッドカバーはどの色にも合うように、白を基調としたシンプルなデザインにした。

キャディバッグやクラブヘッドとの相性を考え誕生したレディス専用のヘッドカバー(撮影/大久保彩)

女性開発者の熱意と共感によって生み出された、まさに“女性による女性のためのゴルフクラブ”。試打データを計測して分かったが、普段の飛距離と大差は無く、むしろミスショットでも曲がり幅が少なく、弾道がまとまっていた。最近はメンズクラブしかチェックしていなかったが、この機会にレディスモデルを今一度見直してみようと思った。

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