【INTERVIEW】台北金馬映画祭で4冠達成。台湾・日本合作映画『オールド・フォックス 11歳の選択』が本日公開。台湾の天才子役と名高いバイ・ルンインにインタビューを敢行!

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シャオ・ヤーチュエン監督による台湾・日本合作映画『オールド・フォックス 11歳の選択』が、新宿武蔵野館ほかにて全国公開中だ。
台北郊外に父とふたりで暮らすリャオジエには「家を買い、亡き母の夢である理髪店を開く」という夢がある。その夢を叶えるため、コツコツと倹約をして暮らしていたのだが、“腹黒いキツネ”と呼ばれる地主・シャ社長との出会いにより、まだ幼いリャオジエの心は揺れ動いていく。
人に優しく思いやりはあるが、なかなか家を買うことが出来ない父親と、成功のためなら他人を見捨てろと言うシャ社長の間で揺れ動く11歳のリャオジエを演じたのは、SABU監督の映画『Mr.Long/ミスター・ロン』(17年)で本格的に映画デビューを果たした後、映画『親愛なる君へ』(21年)、Netflix配信ドラマ『悲しみより、もっと悲しい物語 The Series』などで、観るものを引き込む存在感を残すバイ・ルンイン。
映画の注目ポイントを尋ねると、「ゴミ集積所に並んでいた車が面白いので見てほしい」と可愛げのあるコメントを残した彼だが、その演技力は確かなものだ。そんなまだ15歳の彼に話を聞いた。

撮影/浦田大作 文/浅川美咲

——オファーを受けた時の心境を教えて下さい。

「今回のシャオ監督は、お父さんがとても尊敬している監督さんなので、僕よりもまずお父さんが凄く喜びました。お父さんが信用している監督さんと仕事が出来るのは嬉しいなと思ったのが最初の気持ちです」

——脚本を読んだ時に、どんなストーリーだと感じましたか?

「最初に脚本を読んだ時には、僕が主役だという感覚は全くなかったです。色んな人のエピソードがいっぱい入っていたから、群像劇みたいな、全体で作る作品だなって僕は思いました」

——誰目線で脚本を読んでいましたか?

「お父さんの目線で読んでいました」

——それは意外ですね。お父さんの心情に共感したから、その目線で読んでいたのでしょうか。

「無意識でしたね。あまり考えずに読んでいました」

——本作は、1990年代の台湾が舞台になっていますが、その年代の雰囲気を知るためにしたことは?

「僕が今暮らしている時代とはかけはなれているので、最初は当時のニュースを読みました。特に、作品の中に金融の事件について出てくるので、その当初、台湾がどんな様子だったのかを自分で調べてみました。あとは、あの当時はまだ携帯をあまり使わない時代だったということが分かったので、僕もなるべく携帯を使わない暮らしに慣れようと思いました」

——心情的な部分では、リャオジエを演じるにあたって、役作りされたことは?

「僕が演じたリャオジエという役柄はお父さんとシャ社長のふたりの影響を受けていて、右に行ったり左に行ったり迷っている感じの役だったと思うんです。それを表現するための気持ち的な準備として、撮影地だった萬里という場所に住んでみました」

——どんなことを感じましたか。

「普段僕は台北市の中のいわゆる都会のほうに住んでいるんですけど、撮影していた場所はちょっと田舎だったので、僕が台北市で感じている、緊密でテンポの速い暮らしではない、少しゆったりとした緩い感じでした。その生活空間に慣れたかったので、その空間でぶらぶらしていました」

——撮影に入る前に、監督からこういう風に演じてほしいなど、役について何か指示はありましたか?

「監督から、特別何か要求されたことはなく、わりと自由にさせてもらいました。ただ、脚本から読み込めないこともあるので、そういう時は監督が話をしてくれました。あとは、演じる役柄になにか特徴をもたせるために、生活の中になにかがあるといいなと思っていて。その中で、リャオジエが住む家には、マンガ本とかその当時のものが色々置いてあったんです。ただ、それだけだとつまらないなと思って、そこで自分自身が得意なルービックキューブを生かしました」

——リャオジエがルービックキューブをしているシーンもありましたね。その案は、バイさんが考えて撮影の小道具になったんですか?

「そうです。監督にそういう話をしたんです」

——ほかの作品でも、自分で小道具などプラスで考えたりするのですか?

「ほかの作品の時には、あんまりそういうことは思わなかったんです。今回の現場の美術スタッフさんは、非常にこだわっているスタッフさんで、リャオジエ達が住んでいる家の中の木材なんかも台中のほうから運んできたりしていて。そういう美術が、この作品の世界に入っていくきっかけになりました。今までの出演作と比べても、やっぱりそこが印象強かったです」

——リャオジエには「家を買う」という夢があります。物語が進むにつれて、その夢にどんどんと本気になっていく姿が印象的で。その気持ちはどのように表現を?

「脚本を読んで、撮影する前からそれは考えていました。監督さんからも言われていたのは、最初は、楽しそうに、家を持っていたいなと話す親子だった。そんな中、シャ社長が現れて、社長の言葉に子供としてのリャオジエは刺激されていきます。それに乗っていくって訳じゃないんですけど、それに合わせて自分の気持ちがだんだん激しくなっていったり、外に飛び出していく時の気持ちは、自分で意識して演じていました」

——リウさん演じるお父さんとは、本物の親子のようにみえました。

「最初のころは、僕はお父さん役のリウさんとあまりお話はしていませんでした。撮影の初日は、お父さんと1階に住むお店の人達とのシーンで、僕はやることがなくて。なので、2階のリャオジエの部屋でゴロゴロ寝ていたりとか、マンガを読んだりしていました。そうしたら待ち時間になったようで、リウさんが2階に上がってきて、ゲームを始めたんです。僕はゲームが出来ないのですが、そのゲームの話から、だんだんとお喋りするようになりました」

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——今回演じる時に悩んだシーンはありますか。**

「特別難しかったなと思うシーンはないのですが、ひとつ挙げるとしたら、後半のシャ社長とリャオジエが向き合っていくシーンです。どういう演技にするか考えながら演じました」

——作中には、思いやりを持つお父さんと成功の為なら他人を蹴落とすシャ社長、正反対の大人が出てきます。バイさん演じるリャオジエはその間で揺れ動く役柄ですが、作品と向き合う中でなにかバイさんの中で変わったことはありますか?

「普段、自分の生活の中で、他人に対して思いやりを持つとか、相手のことを考えるってことを特別意識しながら暮らしていませんでした。今回この作品を通して思ったのは、やっぱり思いやりというのは、人生の中、社会の中で必要なものなんだなって。人を思いやるということに対して、あまり意識しないで暮らしてきたので、作品を通してその必要性を凄く感じました」

——たくさん心に残るシーンがありますが、個人的にはリャオジエが泣きながらご飯を食べて書置きを残すシーンが好きで。バイさんが好きなシーンを挙げるなら?

「今言って下さったところもそうなんですけど、僕が思ったのは、車の中でシャ社長と一緒にいて、シャ社長が『お前は俺だ、俺みたいだ』ってことを話す時に非常に冷たく話すところです」

——完成した映像を観た時はどんな感想を持ちましたか。

「みんなとこの作品を観た時に、僕は凄く興奮しました。ついにこれが上映されていくのかと思ったら凄く興奮して。そして、作品の中の情景がとても僕にとってはリアルでした」

——バイさんは、『Mr.Long/ミスター・ロン』(17年)で本格的に映画デビューされたそうですが、お芝居を始めたきっかけは?

「この世界に入った一番のきっかけは、お父さんが芸能関係の事務所をしていることです」

——普段は映画やドラマなど、エンタメをたくさん見ているんですか?

「見ています。アクション系が好きでよく見ています。僕は、アクションの俳優になりたいと思っています」

——ちなみに日本の作品は見られますか。

「たくさん見ていますね。『仮面ライダー』が好きです。あとは『勇者ヨシヒコ』を見て、山田孝之さんが好きになりました」

——今お芝居をしていて楽しいなと思う瞬間はどんな時でしょうか。

「みんなと一緒に頑張る感じかな。人と何かを作り上げてくことが凄く楽しいと思います」


●プロフィール バイ・ルンイン
2016年、TVシリーズでデビュー。17年にSABU監督による日本・香港・台湾・ドイツ合作『Mr.Long/ミスター・ロン』でスクリーン・デビュー。その後、TVドラマ、映画と幅広く活躍。日本では『親愛なる君へ』(21年)が公開された。Netflix配信ドラマ『悲しみより、もっと悲しい物語 The Series』(21年)で、22年にゴールデンベル賞TV部門で助演男優賞を受賞した。


●作品紹介

『オールド・フォックス 11歳の選択』
監督/シャオ・ヤーチュエン
脚本/シャオ・ヤーチュエン チャン・イーウェン
出演/バイ・ルンイン リウ・グァンティン アキオ・チェン ユージェニー・リウ 門脇麦
配給/東映ビデオ

11歳の少年リャオジエ(バイ・ルンイン)の夢は、優しく思いやりのある父・リャオタイライ(リウ・グァンティン)とともに“家を買って、理髪店を開くこと”。倹約しながらも、その夢のために生きていたのだが、バブルが到来し社会が大きく変化していく…。そんな中、父親とは正反対の考えを持つ家主・シャ社長(アキオ・チェン)と出会い、リャオジエにも心境の変化が訪れ…。

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