バラを育てている人にとって病害虫対策ほど悩ましいものはありません。近年では環境への配慮から、消毒をしないで栽培できるバラが誕生しています。病気に強いバラの傾向と品種をいくつか紹介しましょう。
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作出年代で耐病性は大きく違う
バラは病気に弱く、絶えず消毒をしなければきれいに咲かないものと思っていませんか? 欧米では2000年に入ってから、環境への負荷を軽減する目的で、バラの耐病性が重視されるようになり、病気に強いバラが生まれました。
日本では長らく、「バラは病気にかかるもの」、「それを世話してきれいに咲かせるのがバラ育ての醍醐味」というとらえ方がなされてきましたが、バラの耐病性への関心は年々大きくなり、日本でも耐病性の強い品種が次々に誕生しています。
誤解を恐れずに言えば、ここ数年にお目見えしたバラなら、そのほとんどが耐病性に優れていると考えてよいでしょう。そうでなければ新品種として市場に出すのは難しい時代になってきたわけです。
もちろん、昔のバラには素晴らしい名花が揃っていて、たまらなく魅力的なのですが、耐病性の観点からバラを評価するのも時代の流れというもの。
何十年も前のバラのカタログに「耐病性にすぐれた」という記載があっても、最近のバラよりずっと弱いということは多々あるのです。
ローメンテナンスのおすすめバラ
今後は美しさと耐病性を兼ね備えたバラがますます増え、主流となってくることでしょう。
筆者がおすすめのローメンテの品種をいくつか紹介します。
マチネ
コルデス(独)が2019年に作出した紫ピンクのフロリバンダローズ(中輪房咲き)。花形は八重咲きでふっくらと開花し、やさしげな雰囲気にあふれています。花弁質がよく花持ちがよいのもうれしい点。樹形は木立性で90~120cmほどの高さになり、鉢栽培にも向きます。
マチネは特にバラの大敵である黒星病に強いのが特長です。庭の条件にもよりますが、春の花の前後と、夏剪定の後、計3回バラ専用の殺虫殺菌剤をスプレーしておけば乗り切れます。
4月初めと秋花の前にも散布すれば万全でしょう。耐暑性も強いので近年の猛暑続きの夏も安心です。
ボレロ
カップ咲きからロゼット咲きになるクリーミーホワイトの花は繊細な趣があり、あまり耐病性があるようには見えません。でも葉は照葉で黒星病に強く、花弁質もしっかりしていて雨にあっても開いてくれる頼もしさがあります。
メイアン(仏)による2004年の作出花で、消毒の回数はマチネと同様でよいでしょう。
株が若いうちから花付きがよく、たくさんの花を繰り返し咲かせます。樹高は90cm程度とコンパクトで鉢植えにもぴったり。剪定の際は細い枝もなるべく多く残し、やや高めに切るのがよく、細めの枝にうつむき加減に咲く姿も素敵です。
クー ドゥ クール
2020年に日本の京成バラ園芸が作出したフロリバンダで、花弁の先が尖った宝珠弁咲きの花形と花色に新規性があります。
セミダブルの軽やかな花形で、グレーピンクの花弁の底に赤紫色のブラッシュが入る、独特な美しさを写真で紹介できないのは残念ですが、ぜひネットなどで確認してみてください。
樹高は100cmほどで株の下にも花をつけるので鉢植えにしても見栄えがします。
また、四季咲き性といっても夏はきれいに咲けないバラも多いのですが、花弁が少ないせいか夏でもきれい。ほぼ無農薬でも咲く、耐病性にとても優れた品種です。
サニー ノックアウト
無農薬栽培、ローメンテナンスの品種の代表といえば ‘ノックアウト’。ローズピンクの半八重咲きのバラですが、こちらは同じシリーズで、2006年にアメリカで誕生した淡い黄色の品種です。黄色からすぐ白に褪色するため、株の中で黄色と白の2色が楽しめます。
完全無農薬でも育ちますが、きれいに咲かせるためには春の花の前後と秋花の前に消毒をすれば完璧です。
ノックアウトシリーズのバラは‘ブラッシング ノックアウト’、‘ホワイト ノックアウト’など花色のバリエーションが多く、手入れの時間が取れない方に特におすすめです。
シャリマー
耐病性と美しさを兼ね備えたバラの品種群、ロサ・オリエンティスの初期の品種で2019年にデビュー。外弁が白で中心が淡いピンクのロゼット咲きの花形は、多くの人に愛されるバラの典型といえます。
花弁の先が尖るのも最近のバラらしい姿です。ダマスクやティーの心地よい香りもあります。
シュラブ樹形で株はやや横に広がりますが、ほぼ木立性のように育てられ、秋に枝を切らずに伸ばせばつるバラとしても使える便利なバラ。黒星病にとても強く、ほぼ無農薬でも育ちます。
ロサ・オリエンティスには、他にも優雅で強いバラがたくさん揃っています。