志は皆同じ 濱田祐太郎の開拓した道にコストをかければ莫大なカネを生む

濱田祐太郎(C)日刊ゲンダイ

【今週グサッときた名言珍言】

「僕がハンターとして捕まえる側で。暗闇ステージとか作ってもらえれば無敵かなって」
(濱田祐太郎/テレビ朝日系「耳の穴かっぽじって聞け!」6月4日放送)

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2018年に「R-1ぐらんぷり」(フジテレビ系)で優勝した生まれつき、ほぼ全盲の漫談家・濱田祐太郎(34)。しかし、王者にふさわしいチャンスが与えられたかといわれると首をかしげざるを得ない。

よく賞レースで優勝するとバラエティー番組を“一周”するなどといわれるが、他の王者と比べて「あれ? 俺、この番組呼ばれてないな」と思うことが少なくなかったという。だから、今からでも「逃走中」(フジテレビ系)に出してほしいと言って、その起用法を笑いを交えて語ったプランが、今週の言葉だ。「こういうアイデアひとつ、工夫ひとつで全然やれる余地はある」と続けた。

そんなアイデアで濱田を起用した代表例が「水曜日のダウンタウン」(TBS系)の「『箱の中身は何だろな?』得意な芸人№1濱田祐太郎説」だ。しかし、こうした例はごく限られており、障害のある芸人が出演できるのは、福祉系の番組がほとんど。そんな状況だと、たまにバラエティー番組に出ると、その人が「障害者代表」のように捉えられてしまう。だから、濱田もSNSで「障害者の芸人もバラエティーにバンバン出して世の中に慣れてもらうことの方が大事」(24年2月14日)と訴えるのだ。

日常で感じた違和感やあるあるをネタに

濱田は小学6年の頃、ビッキーズやハリガネロックらの漫才の面白さに衝撃を受けた。その1カ月後に開催された第1回「M-1グランプリ」(テレビ朝日系)は、ハリガネロックが絶対優勝すると確信していたが、優勝は中川家。「さらに面白い人たちがおんねや」とお笑いの世界に魅了され、芸人を目指すようになった(ヤフー「Yahoo!ニュース特集」22年1月2日)。

当然だが、他の健常者の芸人たちとそのきっかけは何も変わらない。彼の漫談もそうだ。彼自身が日常で感じた違和感や、あるあるをネタにしている。ただ、目が見えないという“視点”があるだけだ。

障害の有無ではなく、実力がないから出られないと思える世界でなければならない、と冒頭の番組でウエストランド井口は言う。それには濱田のように実力があり、結果を出した人間が普通にバラエティーに出ていなければならないと。確かに彼を出演させるためには、サポートする人が必要になり、多少余分に金がかかる。しかし、同番組で、とろサーモン久保田が言うように「やっと濱田くんが開拓した道はそこで止めたらあかんくて、多少お金がかかろうが会社は押し出してやるべき」だ。

そして彼が先駆者となれば、莫大な金を生むに違いない。

(てれびのスキマ 戸部田誠/ライタ―)

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