最寄りのバス停? 半径1キロどころか…公共交通〝空白地〟17市町村「ある」 自治体のコミュバスも縮小・廃止の動き〈南日本新聞・全43市町村地域交通アンケート結果【前編】〉

コミュニティーバス廃止に伴い町内で運行するスクールバスへ乗り込む生徒ら=7日午前7時40分ごろ、湧水町木場

 路線バス、鉄道といった公共交通機関の利用が不便な交通空白地について、鹿児島県内の17市町村が「ある」と考えていることが南日本新聞のアンケートで分かった。「ない」とした24市町村の中にも、行政の委託などでコミュニティーバス(コミュバス)や乗り合いタクシーを運行し、かろうじて確保している地区が目立った。歯止めのかからない人口減少や深刻化する運転手不足のため、公共交通を維持する難しさが顕著となった。

 国土交通省は「過疎地域や交通が著しく不便な地域」を空白地とする。著しく不便な地域の目安として、半径1キロ以内にバスの停留所や鉄道の駅が存在せず、タクシーが恒常的に30分以内に配車されない地域-などとしている。アンケートでは、より厳格な基準の「バス停から300メートル以遠」や、住民の利便性を踏まえて答えた自治体もあった。

 具体的に空白地の地名を記したり地図で示したりしたのは11市町。「中山間地の一部」や「路線バスが走る幹線道路や駅周辺以外が該当する」といった趣旨の回答も複数あった。交通機関がなくなった時期は1970年代後半~2023年と幅広い。「不明」「以前から」の回答も目立ち、把握できないほど長期間経ている状況もうかがえた。

 空白地は「ない」と回答した市町村でも、コミュバス(週1~7日)や乗り合いタクシーしか走っていない地区が少なくない。コミュバスの縮小・廃止の動きも見られた。

 湧水町は委託運行のコミュバスを観光路線だけ残し、9路線を23年3月末にやめた。利用の低調さに加え、運転手確保が難しかったためという。現在はスクールバスと高齢者向けの乗り合いタクシーでカバーする。

 長島町は民間事業者から町内3路線の9月末撤退方針を示されたのを受け、バス運行継続へ向け地元NPO法人による代替交通を調整している。24年度末で委託契約終了予定の巡回バスについても予約制乗り合いタクシーなどを検討する。

 空白地が「ある」と回答したのは、鹿児島、鹿屋、枕崎、阿久根、指宿、垂水、薩摩川内、霧島、いちき串木野、奄美、伊佐11市と、大崎、東串良、南大隅、龍郷、伊仙、知名6町。十島、三島両村は陸上の公共交通機関がない。

 アンケートは43市町村に2月に依頼。市町村内の状況や作成が努力義務化された地域公共交通計画などについて尋ねた。5月までに回答を得た。

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